鴉の声(東京都) | コワイハナシ47

鴉の声(東京都)

前項で述べた、鳩の死骸をベランダに投げ込まれた事件は、既刊の拙著『実話奇譚呪情』に収録した。詳しくは是非お読みいただきたいが、一〇年以上前、商店街沿いに建つマンションに住んでいた頃の出来事だ。

その頃、一羽の鴉がよくベランダに来ていた。ある日、草花のコンテナに生の肉片が埋め込まれていることに私が気づいて取り除いたところ、翌日、ベランダに首の無い鳩の死骸が置かれ、そばで鴉がカアとひと声。鴉が飛び去った後、再びコンテナを調べてみたら、土の中に鳩の生首が埋まっていた──。

以上、本当にあったことである。

幽霊や妖怪は登場しないけれど、根岸鎮衛だったら『耳嚢』に入れてくれたと思うから、こういうエピソードも実話奇譚の範疇だとするのが私の考え方だ。

しかし先日、より怪談らしい鴉にまつわる体験談を傾聴した。

──今から一〇年くらい前の話。

都内の繁華街で飲食店を営んでいた林忠洋さん一家は、その頃、鴉に悩まされていた。

一羽の鴉が、厨房の外にあるダストボックスを見張っていて、店で働いている忠洋さんの両親や従業員が蓋を開閉するわずかな隙に襲ってきてゴミを収奪するのだ。

鴉の襲来は、なかなか止まなかった。従業員は怖がるし、ひとたび追い払っても、しばらくするとまた飛んでくる。ゴミ出しの時間を鴉が活動しない夜間のみにしてみたところ、だいぶ被害が減ったが、それからもときどき、ダストボックスの近くで鴉を見かけた。

忠洋さんは当時小学三年生で、二歳下の妹と一緒に登下校していた。ゴールデンウィーク前のある日、妹と帰宅したらダストボックスのそばに鴉の死骸があった。

平らに潰れており、トラックか何かに轢かれたのだろうと思われた。間もなく、轢いたのは店に食材を届けにきた配送車だとわかった。忠洋さんの父から話を聞いた配達員自身が、「そう言えば何か轢いたような気がする」と言ったのだ。

それから二、三日後、その配達員はフロントガラスに飛び込んできた鴉のせいで自損事故を起こして辞めてしまった。

前後して、忠洋さんと妹も学校から帰る途中、暴走車にはねられた。

事故直後から一緒に救急車で病院に搬送される間中、妹はずっとカアカアと鴉のような叫び声をあげていた。

妹より先に退院した忠洋さんは、夜、鴉の鳴き声で目が覚めた。すると目の前に驚愕した面持ちの父がおり、その顔を見た途端、今の声は自分が発したのだと理解した。

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