あの事件の死神(東京都世田谷区) | コワイハナシ47

あの事件の死神(東京都世田谷区)

二〇〇〇年一二月三〇日深夜に起きた《世田谷一家殺害事件》は、ご存知の方が多いだろう。当時シェフの後藤生真さんは事件現場の付近で飲食店を営んでおり、平日は配送専門の弁当屋を、金・土の夜は居酒屋を生真さんひとりで切り盛りしていた。

彼は事件発覚の前から、被害者一家が住んでいた家の前を毎日オートバイで行き来していた。件の家は公園の立ち退き区域に建っており、生真さんはこの公園と都道を挟んで隣接する福祉施設に毎日弁当を届けていたのだ。また、自宅アパートとの行き帰りにも、この家が面している園内の車道を通ることが多かった。

「事件後、五回も職務質問を受けました。僕は警察が想定した犯人像に年齢や背格好が近かったようで……。あの事件、未解決ですよね?ご近所で起きたというだけじゃなくて、殺人が行われた直後だと思われるときに現場の近くで変なことに遭遇したから、僕にとっては個人的に忘れられない事件で、早く解決することを願っているのですが」

それは事件当夜の午前二時頃に起きた。その日は土曜日で、生真さんの店は深夜〇時まで居酒屋営業をしていた。そして店を閉めて自宅にオートバイで帰る途中、公園内の十字路で信号待ちをし、信号が青に変わって発進したところ、目の前に人が飛び出してきたのだ。

慌てて急ブレーキを掛けたが間に合わず、衝突を回避するために、あえてオートバイを転倒させた。このとき生真さんは右腕を道路に強打、内出血と擦過傷を負いつつも、咄嗟に周囲を見回して、さっき飛び出してきた人物を探した。

しかし、それらしい人影は見当たらなかった。

「消えた!と、思いましたね。転んだとき、バイクが体から離れて道路の上を滑っていったので、今の人、バイクが当たったら怪我をしちゃうと思ったんですよ。でも誰もいませんでした。走って逃げていく人影も見えなかったし、逃げ隠れするほどの時間もないのに。一瞬のことだったけど、野球のユニフォームを着た若い男だったような気がします。たぶん野球のヘルメットも被っていました。すぐそばに、某大学野球部のグラウンドがあるんです。だけど夜中の二時ですからね……」

後日、例の福祉施設に弁当を届けに行った折に、受け取りに出たスタッフにこの話をしたところ、「あなたが見たのは犯人だったかもしれない」と指摘された。

「でも僕がぶつかりそうになった人は消えましたから!事件からしばらくして、あの家の窓から道路の方を眺めている人がいて、車やバイクで前を通りかかったときにその人と目が合うと、公園の先の十字路で事故を起こすって噂が地元で立ちました。ええ!僕がオートバイで転倒した十字路ですよ。……あれは死神だったのかもしれませんね」

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