四ツ橋のプラネタリウム(大阪府) | コワイハナシ47

四ツ橋のプラネタリウム(大阪府)

大阪市内で長年、学校の先生をしていた斎藤さんから聞いた話。

オンラインでの取材は、ラフな格好をしている人が殆どなのに、斎藤さんはネクタイもビシッと締めた背広姿で応じてくれた。

「今、大阪のプラネタリウムは中之島の辺り、リーガロイヤルホテルの近くに移転してしまったけれど、昔は四つ橋にあったんですよ。その四ツ橋に設置されたプラネタリウムが日本初、いやアジアで最初に設置されたプラネタリウムだったんです。

当時は今より公害も酷いし、空気も汚かったので、夜空を見上げても街中では殆ど星なんて見えなかったんです。街灯とか町の灯りは今の方がずっと多いんですけどね。

だから、昼間に街中で幾万の星が見られるなんていうのは、そりゃ魔法や夢みたいな話で、出来た当初は凄い人の入りでした。

わたしが、初めてプラネタリウムに行ったのは弟とで、早い時間のチケットは既に全部売り切れとってね、最終の時間のをやっと買えたんだったかな。

もう随分と昔の話なんで、記憶が定かやないところもあるんですが、まあ最初暗くなって上を見上げて、ばあっと星が広がったのを見た時は静かにしないといけないのに、思わずわあっと声が出るほど感動しました。

でもね、しばらくするとね、首が痛い。

じーっと同じ体勢で上を見上げているから、首にきたんでしょうね。それでも夢中で映し出される星を見ていたら、鼾が聞こえてきたんです。

ガーガーとね。マイクでの星空の説明も聞き取りにくいし、迷惑だなあ、誰だろうと思ったら、隣に座っている弟でした。

体を揺すって起こそうとした時にですよ、白い手が椅子の間からズルズルと蛇みたいに伸び出て来てね、寝てた弟の耳を抓ったんです。

弟はそれでも起きないで、気持ちよさそうに寝てて。あれは人の手じゃないのは分かっていたもんだから、立ってプラネタリウムの外に出ようかなと思ったけど、反対側の席に座っていたのが、怖そうな大人でね。

あの白い手が自分のところに来たらどうしようと、怖くってしょうがなくて。

もう天体ショーどころやなかった。そして指を噛んで早く終わらないかなと耐えていたんだけど、恐れていたことが起こって、白い手が今度はわたしの方にすうっと伸びてやって来たんです。

なんとか体をひねって、手をどうにかしたいと思ったけど体が凍らされたみたいにガチガチに固まってしまっていて。白い手の先には長い爪がついててね、わたしのほっぺたのところをカリカリと引っ掻いたんですよ。

多分、なにか文字を書いて伝えようとしてたんじゃないかな。爪で文字を書くような感触だけが、プラネタリウムの闇の中でも分かりました。手は見たくなかったから、ぎゅっときつく目をつぶってて。

しばらくしたら、弟の声がして目を開けたら、プラネタリウムの中が明るくなっていたんです。弟はのんきな声でね『なんや兄ちゃんも寝てたんや。損したなあ、入場料。しゃあないからまた来ような』なんて言うんです。

当然それ以来行ってなくて、いつのまにかプラネタリウムも移転しちゃったんです。

あの時の手がほっぺた引っ掻いてなにを伝えたかったんかなって、たまに思い出して考えてしまうんです。もしかしたら星座やったんじゃないかなって気もするんです。

今となっては分からないですが。大阪はお化け多いですよね。

親戚に、見える人がいましてね、京都や奈良より何かを感じることが多いって聞いてますよ。生きてる人と同じで、目立ちたがりが多いんか、未練がましいんか理由は不明ですけどね」

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