トイレの鏡(千葉県) | コワイハナシ47

トイレの鏡(千葉県)

千葉県の中学一年生、大山基希さんは、あるとき同級生三人と地元のボーリング場に行った。大型スーパーマーケットのビルに併設された遊技場の中にあり、親子連れの利用者も多く、中学生が遊んでも比較的安全そうな、健全な雰囲気のボーリング場だ。

基希さんたちは一時間あまりもボーリングに熱中した。が、だんだん飽きてきた。別の遊びをしたくなった。遊技場には他にアーケードゲームのコーナーもある。

「そろそろ違うことしない?僕ちょっとトイレ行ってくるから荷物を見といてよ」

「わかった。ここで待ってる!」

すぐ戻ると言って基希さんはトイレに駆けていった。使ったことはなかったが、同じ階の隅に男子用と女子用のトイレがあることはボーリング場に入る際に前を通ったので知っている。一直線に向かって行って、男子トイレのドアを開けた。

その少し前から男子トイレが見えていた。そして見ている限りではそのドアを出入りする者はなかったが、ドアを開けてみたら、人に体当たりしそうになった。

「すみません!」

急いで謝ったが、その人は振り向かず、無言でスタスタと個室に入っていった。

中年の男性だ。個性に欠ける〝休日のお父さんスタイル〟の普通の人だった。

きっと〝大〟が出そうで焦ってんだな、と、基希さんは思った。彼自身は〝小〟がしたかったので、個室の差し向かいにある小便器に向かった。

小便器の前の壁に、顔の高さで横に長い鏡が取り付けられていた。小便をしている自分の肩越しに、少し離れて後ろに並んだ〝大〟の個室が映っている。

……全部、扉が開いていた。

「へ?」とおかしな声をあげながら、基希さんは個室の方を振り返った。

やはりどの個室の扉も開いていて、どれも内側は空だった。つい今しがた男の人が入っていった個室も。

しかし誰か出ていったらわかるはず。そもそも、ドアを開ける直前に入ったのでなければ、あんなふうにぶつかりそうな所に立っているのはおかしい。

ダッシュでボーリング場に戻って同級生たちに報告した。そうしたところ、中のひとりが、「このビルでは何度か自殺騒ぎがあったから、幽霊かもしれない」と言ったので、全員怖くなり、大急ぎで建物の外に逃げ出した。

表はまだ明るかった。よく晴れた日曜日の午後のことだったという。

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