鶴見緑地の怪談(大阪府) | コワイハナシ47

鶴見緑地の怪談(大阪府)

二〇二〇年の五月、新型コロナ・ウィルス感染症により緊急事態宣言が発令されて、困ったのはうちにいる子供のことだった。

幼稚園も休みになってしまい、預ける場所もない。

小さな子を家にずっと閉じ込めておくのも可哀そうだし、どうしようかなと考えた。

「密閉、密集、密接」の三密を、感染拡大を予防するためには避ければよいということらしいので、人の少ない朝の時間帯に鶴見緑地公園に行くことに決めた。

とりあえず、これだけ広い公園ならば、密になりようがない。どれくらい広いかというと、園内を馬で走り回れるほどの広大な敷地があるのだ。

サッカーボールや縄跳びを持って行き、汗だくになるほど子供と遊び、公園のベンチで座ってお茶を飲んでいた時のことだ。

野鳥を観察に来たと思しき人たちが、近くをすれ違った時に「池の辺、まだ幽霊出るんかなあ」と言っているのを耳にした。

聞き違いではない、確かに幽霊と言っていた。

緑あふれる鶴見緑地は、かつて「国際花と緑の博覧会」、通称「花博」の開催地だった。

今は当時のイベントの面影は殆どなく廃墟のようになった一部のパビリオンが残されているだけだが、花博はバブル期最大のイベントであり、総来場者数は二千三百十二万を超え、特別博覧会史上最高を記録するほど会期中、ここには大勢の人が訪れていた。

そして、私が小学生の時に、ここで連日幽霊騒ぎがあったことを思い出した。

みのもんた司会の番組や、全国紙や週刊誌でも当時大きく報道されていたので覚えている人も多いと思うが、花博の開催期間中に、いちょう館のパビリオンで何度も幽霊の目撃談が報告された。

コンパニオンが誰も居ないのに髪の毛をぐいぐい引っ張られたり、大勢の拍手の音が聞こえてきたり、落武者を見かけたという観光客もいたという。

他にもいちょう館の前で写真を撮ると、顔が緑や赤に染まって写ったり、変な物が写り込んでいたり、閉館後にエアコンのスイッチを切ると、パビリオンの天井から「あついよぅ」と声が聞こえたりしたそうだ。

当時、私の同級生の母親が花博会場で働いていて、子供に「あれ、本当よ」と聞かせていたそうなので、単なる噂ではないと思う。

試しに、地元の人向けの情報サイトに、当時の花博会場で不思議な体験をした方や記憶している方はいませんか?と書き込みを残してみた。

すると花博当時の体験談は、残念ながら殆ど集まらなかったのだが、会場となった鶴見緑地で笑い声にずっと追いかけられた話や、大きな人の顔をした鳥にばったり出会ってしまった話などが収集できた。

三十年以上の長きにわたって、何かが「出る」と聞く鶴見緑地。

何故、その地で不思議なものを見たり聞いたりする人がいるのかは分からない。

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