河童の話(鹿児島県) | コワイハナシ47

河童の話(鹿児島県)

鹿児島県内には〈十五夜綱引き〉という祭りがある。

隼人族の月信仰と関係があると言われている。

ツナネリ(綱を綯う)ことから始め、夜はそれを使った綱引き、続いて縄で土俵を造り、相撲を取り合うのだ。

河童伝承が残る薩摩川内市では、〈十五夜綱引き〉を基調とした「川内大綱引き」という行事も市を挙げて行われている。

ある人は、十歳になるまでこの〈十五夜綱引き〉の相撲で勝ったことがなかった。

彼は背だけが高く、痩せていた。

自分より小さな相手に投げ飛ばされるのが悔しくて仕方がない。

父親と相撲の稽古をしたが、効果は薄い。

体重を増やそうとして大食いもしたがお腹を壊す。

打つ手がなくなったとき、父親が教えてくれた。

「河童さんは相撲が強いっち聞くが。一度頼んでみるといいかも知れん」

しかしどうやって頼めば良いのか分からない。

父親が調べたところ、「河童さんは水神様だから、水神様に頼むといい」と言い出した。

水神様を求めて、父親と川沿いを歩く。

漸く〈水神様〉の石碑を見つけ、そこで祈った。

水神様、河童さん、僕が相撲で勝てますように力を貸して下さい、と。

祈りが通じたのか、綱引きのときから力が漲っていた。

相撲が始まる。

相手は自分より大きな子だ。

がっぷり四つの状態から必死に力を込めると、相手が勢いよくもんどり打って倒れた。

初めての勝利だった。

取り組みの後、相手の子が首を傾げている。

「お前とやっちょっときよ、なんか知らんけれど、急にふわっと身体が浮いたようになって、気がついたら倒れちょった。自分でもよく分からん負け方やったが」

何かずるをした、していないと言い争いになり、せっかくの勝ちに水を差された気分になった。

後日、父親と水神様へお礼へ行った。

相撲で勝って貰った鉛筆の箱を一度お供えして、手を合わせる。

そして最後、箱の中から鉛筆を一本取りだし、そのまま置いて帰った。

翌日その水神様の前を通ると、鉛筆は姿を消していた。

鹿児島県某所に川沿いの家がある。

元々は、とある会社経営者が避暑のために建てたコンクリート製の別宅であった。

三階建ての豪華なもので、かなり凝った造りだ。

が、途中から経営者の親族が住み始めたという。

三十代の両親と、小学生の男子二人の家族構成だった。

ところが住み始めてから少しして、子供の兄の方が三階の吹き抜けから落下し、死亡。

葬儀を出した後、間もなくして父親も出先で急死してしまった。

残った二人の家族は別の場所へ居を移して、この家は空き家となった。

持ち主である経営者がこの家を手放したのか、売り家の看板が掲げられた。

次に入ったのは個人経営の会社事務所であった。

川に向かって大きな窓が切ってあるのだが、そこが応接室になったのは、外から見てすぐ分かる。

ところが二ヶ月もしないうちに、応接室の窓が内側から塞がれた。

カーテンやブラインドではなく、段ボールだったので完全な目隠し状態だ。

せっかくのロケーションなのに勿体ないなと噂しあっていると、この事務所も短期間で移転してしまった。

次に入ったのも会社関連だったが、半年もせぬ内に出て行ってしまう。

誰かが漏らした。

「川沿いに家を建てると、人が死ぬからよくない」と。

川沿いに建てられた家は、住んだ人が死ぬ家になると言う。

理由は、川面から上がってくる湿気で健康を損なうこと。

また、場所によってはカワンカミ(川の神)の障りがあるから、らしい。

この川沿いの家に入った事務所に勤めていたある人が言う。

〈残業していると、おかしな気配がする〉

〈三階の吹き抜けの真下で、何か大きな落下音が聞こえるが、何もない〉

〈川沿いの窓から何かが覗いていることがあった。小さな黒い頭に目だけが見える〉

〈会社にいる人間が次から次に病気に罹った〉

数々の出来事に、社員は恐れを成した。

社長に相談し、何度かお祓いをして貰ったが効き目がない。

物件に何かがあるのだと全員の意見が一致したとき、社長がある決断を下した。

〈事務所の移転をしよう。世の中には目に見えない何かがあるのだ〉

社員数が少ないとは言え、ここへ移るには各種費用が掛かっている。

それすら無駄にしても良いのだという判断だった。当然会社そのものへのダメージは計り知れない。それでも、という英断であった。

が、こういう集団の中にはあまり気にしない者も居る。

その人物が冗談めかして、こんなことを話した。

〈川沿いだから、きっと河童の祟りじゃないの?まあ、そんなのないけど。だいたいさぁ、そんなので引っ越すなんてアホらしいやん?〉

そう言っても、いろいろなことが起こっている。

中には彼の態度を諫める者も出てきて、よく口論になった。

それでも彼は何度も〈河童のせい〉だと吹聴した。

準備が整い、事務所移転当日となった。

その日、この〈河童のせい〉と口にしていた社員が、三階からの階段を転げ落ち、大怪我を負った。

見ていた人が言うには「物理法則を無視したような落ち方」だったと言う。

彼は会社へ復帰しようとしたが後遺症もあり、結局自主退社してしまった。

この川沿いの家は、物見遊山で侵入者が増え、近隣に迷惑が掛かるようになった。

問題の元を絶つために取り壊され、今はただの川沿いの空き地である。

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