変わった虫を捕りに行く(長野県) | コワイハナシ47

変わった虫を捕りに行く(長野県)

長野県で飲食店に勤務している小林佳恵さんは、五年ほど前、当時まだ八歳だった息子さんが捕ってきた虫のことが忘れられないという。小学校の夏休みが後半に入った頃で、佳恵さんの実家訪問や家族旅行、小学校の水泳教室といったイベントが一通り済んでしまい、子どもにとっては退屈な日が続いていた。

「宿題をやらせていたんですが、それも日記以外は終わってしまって、放っておくとゲームばっかりしているので、虫でも捕ってきたらと言ってみたら、夕方、虫捕り網と虫籠を持って出ていって、二時間ぐらい帰ってきませんでした」

日が暮れてきて佳恵さんは次第に心配になり、門の外に出てみた。するとタイミングよく、道の向こうの方から虫捕り網を担いだ息子が歩いてくるのが見えた。

息子の方でも佳恵さんに気がついて、走り寄ってきた。

「お母さん、変わった虫が捕れたよ!」

息子によると、クワガタやカブトムシを捕まえたことがある場所を何ヶ所か巡ったが一匹も捕れずがっかりしていたところ、虫捕り網と虫籠を持った自転車に乗った中学生ぐらいの少年がやってきて、声を掛けられたのだという。

「これから変わった虫を捕りに行くんだけど、一緒に来る?」

佳恵さんは「そんなのにノコノコついていって、危ないですよね」と私に言った。

「息子によると、優しそうなお兄さんだったそうです。大きな懐中電灯を持っていて、自転車の後ろに乗せてもらった、と……」

やがて目的地に到着して自転車を降ろされてみると、すぐ目の前に鳥居があった。

鳥居をくぐって神社の参道のような小径を少年についていったところ、お稲荷さんのお堂が見えてきた。辺りは黄昏時で仄暗かったが、そのとき少年が懐中電灯を点けた。

「青い光の懐中電灯だったそうです。お堂や周りの木立を照らすと、どんどん虫が集まってきたんですって。息子はそこで捕まえたと言って玄関で虫籠の中身を見せてくれましたが……カブトムシやクワガタがうじゃうじゃいる中に一匹、カブトムシ並みに大きな金色の甲虫がいました。綺麗でしたけど、でも、次の瞬間、それは他の虫と違って賢そうに私の方を見あげて、大声でニャーッと鳴いたんです!息子が悲鳴をあげて虫籠を玄関の三和土に落として、私は無我夢中でそれを足で玄関の外に出してしまいました。その間ずっと虫はニャーニャーと鳴きつづけていました。ドアを閉めてもまだ鳴き声が聞こえました」

──一時間ぐらいして虫籠を見に行くと、蓋が開いて空っぽになっていたという。

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