信貴生駒スカイラインの幽霊(大阪府) | コワイハナシ47

信貴生駒スカイラインの幽霊(大阪府)

信貴生駒スカイラインは奈良県と大阪府にまたがる有料道路だ。

かつてここにはトップクラスの関西の走り屋が集まっていたこともあって、事故も多かった。中でも有名な大事故は一九八〇年台のバイクによるもので、その影響によって現在二輪車は通行禁止となっている。

幽霊の目撃談も多くあり、首無しライダーや赤い血まみれのバイクに追われる話、背中に幽霊を背負って走行するライダーや、ボロボロの傷だらけの全ヘルで古いバイクに乗っているヤツに追い越されると事故ってしまう、なんて噂もある。

これは、講談師の旭堂南湖さんが主宰のZoomを使ったオンライン・イベント『怪談百物語~みんなで語ろう百物語~』での呼びかけで知り合った、放出に住む翻訳者の伊藤さんから聞いた話。

「信貴生駒スカイラインのトンネルを越えて、ちょっとその先にあった見晴らしのいい場所でソロキャンプしたんです。コロナの影響でテレワークで殆ど家におったんで、久々の野外は爽快でした。冬やからか、人も僕しかおらんかったし。

全く密になりようが無かったですしね。街中は僕ビビりなんで、よう出歩きません。

それに持病持ちの親と住んでるんで、余計怖いんですよ。ほら、基礎疾患があると、コロナに感染したら本当に危ないって聞くじゃないですか。

ソロキャンプと言っても、テントを張らない車中泊だったんですけどね。通販で買ったキャンプ用品を色々と試したかったんです。

携帯食を温めたり、豆からコーヒーを挽いて山ん中で淹れて飲んで、ほっとして。ああ、ええなあって思って、時計見たら夜の十時ちょっと前くらいやったかな。

風もそこそこあったし、寒かったんで、車の中でシュラフに包まって寝ようとしたんです。

携帯ゲームをちょっとやりながら、シュラフの中でうつらうつらしてたら、車の周りがザワついてるんですよ。風で木々が鳴ってるんやなくって、スタジアムの歓声が遠くから聞こえてくるような騒がしさやったんです。

なんやろうって外に出たら、暗闇の中になんか気配があるんです。こう、息を潜めて何人も隠れているような。

風でざーっと木が揺れて、車が通るエンジン音が時折聞こえる。なんかおる気配がする。動物やなくって人が考えながらこっちをじとーっと見ているような雰囲気。

でも暗いし、街灯の周りでしか何があるんかよく見えない。仕方なく、車の中から懐中電灯持ってきて辺りを照らしたんです。

そしたらね、山の方から何かが下りて来るんです。

なんやろうって、見たらスニーカーを履いて、頭が妙に歪んだ男が、林の間から木の枝を手に持って、体を左右にゆらゆらさせながらゆっくりと歩いて来ました。

恐怖は全くなかったです。むしろなんだか楽しそうな不思議な光景でした。

頭がぐにゃあと飴細工というか、ムンクの『叫び』の絵の中の人みたいに歪んでたんです。

そいでね、なんか歪んだ男の体からガソリンの臭いがプンプンするんです。

僕は、なんやこれ、幽霊か?怪物か?そうやとしてもリアルすぎやろって、スマートフォンを取り出して、撮影しようとしたら「っちゃあっそぉおめぇ!」って男の体から声がしてパッと目の前で消えたんです。なんや消えよって、消えんるんやったら最初っから目の前に出てくるなやって、ムカついて、また出てこないかなとスマートフォンを持ったまま、車の近くでじっと待ってたんです。

でも夜の二時過ぎくらいになって、辺りの空気というかその場の雰囲気が急にぞわぞわっと変わって怖くなって。

怖くて、怖くて。何があんなに怖かったんか、わけが分からんくらい怖くって。

車の中で、比喩やなくて本当に震えてました。その時は窓の方も見れないし、ちょっとした物音でも飛び上がるくらいに恐ろしく感じて。

自分でもさっきまで平気やったのに、なんでこんなに怖くて仕方がないんか、分からないんです。

朝が来た時にはほっとしました。冬やったのもあるけど、あんなに長く感じた夜はないです。

もう一回、あれを見たらどんな気持ちになるんか、自分も分かりません。

後でキャンプした場所を調べたら幽霊とかで有名な場所みたいって知りました。

当分はね、休みの日もキャンプもドライブもせんと、ステイホームの予定です。やっぱり家の中が一番安全な気いします」

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