未確認話(宮崎県) | コワイハナシ47

未確認話(宮崎県)

ある人物が宮崎県宮崎市田野町を自転車で走っていた。

ロードバイクでのサイクリングだ。

その日は仲間たちと都合が付かず、単独行である。

ペース配分など自由気ままなので、いつもよりゆったり目のペースだ。

雲ひとつない快晴で、風もさほど強くないから走りやすい。

季節は寒風吹く頃で、田野には〈大根やぐら〉が数多く見られる。

大根やぐらとは、漬け物用の大根を掛けて干す櫓のことを言う。

サイズは、高さがだいたい大人縦三人分以上。横方向の長さはまちまちだが、少なくとも手を広げた大人が三十人を越えるくらいは必要な大きさだ。中にはその三倍も長い櫓があって、大根が干されるととても壮観な眺めになる。

何故田野で大根やぐらが汲まれるのか。

それは、寒い季節が来ると田野で近くに聳える〈鰐塚山〉から乾燥した〈わにつかおろし〉が吹き下ろして来る。これが大根を櫓で干すのに最適なのだ。

(わにつかおろしか)

彼は鰐塚山の方角へ目を向けた。

「……あれ?なんだ?」

鰐塚山頂上の向かって右手側、山体から随分離れた所に何かがあった。

停車し、じっと目を凝らす。

青い空に、お菓子に着いている大きめのアラザンのようなものが浮いていた。

銀色だが陽光を鈍く反射している。もしかしたら半光沢なのだろうか。

ただし、比較対象が鰐塚山しかないせいで、大きさの区別が付かない。

大きいかも知れないし、小さいかも知れなかった。

(縁日で買える銀色の風船か、気象観測で上空へ飛ばすゴム風船か?)

違う。質感や形状から言えば、どちらにも当てはまらない。

銀色の物体は鰐塚山方向へ移動している。

かなり速い速度だ。良く目にする航空機より速い気がする。

途中、急激な角度で高度を上げたり、逆に下げたりを行っている。見ようによってはジグザグとした軌道を描いていた。

飛翔体が鰐塚山頂上へ到達する。と同時に山の裏側へ向けてどんどん小さくなっていき、あっという間に消えた。

その日以来、彼は空に銀色をした丸い飛翔体を目撃することが増えた。

車移動やサイクリングの合間の昼間で、数ヶ月に一度の割合である。どうしたことなのか、いつも自分ひとりの時にだけ姿を現した。

飛翔体は毎回おかしな動きの後、飛び去っていく。

カメラやスマートフォンで撮影しようにも車も自転車も運転中であり、停車後レンズを向けるまでに姿を消してしまう。だから、その姿を収めることが出来なかった。

この謎の飛翔体を見た日の夜は決まって背骨の痛みで目が覚める。

寝違えやこむら返りとは違う、鈍痛である。

寝床から出ようとすれば激痛に変化して、身体を起こせない。

そして痛みがある間、ずっと耳鳴りが響く。

甲高い金属音と、うねるような低音が融合したようなものだ。

時々モールス信号の様に途切れ途切れに聞こえる。

痛みが去ると耳鳴りも消え、あとは安眠することが出来た。

飛翔体と痛み・耳鳴りの因果関係は未だハッキリしない。

彼はある日、ふと思いついた。

飛翔体を見た場所をマッピングしてみよう、と。

何かが分かるかも知れないと考えてからだ。

プリントアウトした宮崎県の地図上に目撃地点と、どの方角へ向けて見えたのか、矢印などで示す。

五、六個記した時点で、分かった。

鰐塚山が中心にある。

(何故、鰐塚山なのか)

気になって、数名の友人たちへ話をしてみた。

「あ、俺も鰐塚山近くの空で何か変なもの、見たことあっが」

「私、夜に光るものが鰐塚山の上にあったの、見た!あそこは何かあっちゃが」

意外と目撃している人間が居ることに驚いた。

しかし、どうして鰐塚山の周辺に出るのか、明確な回答を得ることが出来なかった。

ただ、こんな情報がある。

田野には古代の遺跡が存在する。

鰐塚山などの山々に囲まれた遺跡は、祭祀の場として使われていた痕跡があった。

〈全体的な構造から、天に向かって祈りを捧げていたのではないか〉

ある人がこんなことを言っていた。

古代の人々は、天の何に対し、祈っていたのだろうか。

また、あの飛翔体との関連はあるのだろうか。

調査を継続する必要があるだろう。

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