鬼の待ち受け鬼のミイラ(大分県) | コワイハナシ47

鬼の待ち受け鬼のミイラ(大分県)

「あの、絶対に怒られると思うんで、身元とかバレないように書いてくださいね」

しつこいほどに念を押してから、B君が語ってくれた体験談である。

一年ほど前、北九州に住んでいた彼は、気まぐれに大分県へ旅行に出かけた。

宇佐八幡という由緒あるお宮へ参拝をすませ、何処かで昼食をとろうとガイドマップを見ていた彼は、変わった観光名所を発見する。

鬼のミイラがある寺。

地図を確かめると、場所はさして遠くない。話の種にはうってつけだと、早速くだんの寺を目指して車を走らせた。

長い石段を上って辿り着いた本堂には、誰の姿もなかった。

声をかけてみたものの返事はない。戸口はがばりと開いていて、仏間のような畳敷の広間が見えている。

お邪魔、しまあす。

心の中で声をかけて堂の中へ入ると、本尊の脇に赤い布がかけられた一角がある。

捲くるなり、仰天した。

見た事もない生き物が、口を開けて笑っていた。膝を抱えたその姿は大の大人ほどもあるだろうか。落ち窪んだ眼窩と太い葉巻ほどもある歯は、確かに人間の髑髏を思わせる。しかし、これほど巨大な頭骨の人間がいるとはとうてい考えられなかった。

凄ぇ、凄ぇ。本物の鬼のミイラだ。B君は静かに興奮した。

やがて、この衝撃を誰かに伝えたいという思いに駆られた彼はおもむろに携帯電話を取りだして、レンズを鬼へ向けたのだという。

境内に置かれた「撮影禁止」の立て札は、彼も目にしていた。しかし、幸いにもこの場所には自分しかいない。

友達に写メで送るくらいなら、うるさく言われないだろ。

勝手な自己判断のもと、彼は携帯電話のシャッターを押した。

「へ」

液晶に映しだされた画像は、いちめん真っ黒だった。

光量が足りないのかな。首を傾げながら画面を覗のぞいていた彼の手から、電話が畳に落ちた。

黒い画面の中に、薄ぼんやりと女性の顔が浮かんでいる。

のっぺりとした顔だちの女は、こちらをまっすぐに睨んでいた。

「もう、すぐに画像を消去すると鬼に土下座して。真っ青になって帰りましたよ」

念のため、戻ってからすぐに携帯電話も買い替えたそうである。

【鬼のミイラ】

大分県宇佐市にある十宝山大乗院の本堂に、厨子に入った鬼のミイラが安置されている。座高でおよそ一メートル半、立てば二メートルをゆうに超える大きさであるという。

一九二五年、とある檀家が下関市で購入したが、その直後から原因不明の病に見舞われ、一九二〇年代に寺院へミイラを寄贈したとされている(寄贈したのち、檀家の体調は見る間に回復したそうだ)。戦後、九州大学が調査した結果、ミイラの骨は人骨であり、女性のものである事が判明している。

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