人柱物件(広島県) | コワイハナシ47

人柱物件(広島県)

福山市にある服部大池は「人柱お糸」で有名である。また在原市にも「お国、お兼」の人柱伝説がある。いずれも正保3年頃の話。

この時期までは川が荒れ、池を作る土木作業が多かったのもあるだろうが、天候が荒れやすかった時代だったのかと想像できる。

それにしても、若い女性を人柱にしたのは、何か理由があったのだろうか。神が好む巫女と関連があるのかもしれない。

神と建築は今も繋がっている。家を建てる時や崩す時、必ず神主さんが来て祈祷を行う。地の神様がいると信じる日本人の特徴だろう。

池、溝。城の下に人柱をしたところは多い。今は更地となっているので、わかりにくいが、地名だけ残っている場合がある。土地にまつわる話は物件を探す時に、重要だと私は思う。

「塚」は墓場だったし、「溝」は溝の跡地。「窪」「久保」はくぼ地と一般的に言われる。

今回は場所を明記できない。

これから住む人に悪い影響を与えてはいけないからだ。実際にあった話だけに、言えないことが多くなる。

柏木純子さんが広島県のある街に引っ越した時だった。

ご主人が転勤族で、初めて広島に住んだ。娘の里香ちゃんは小学生。ご主人が忙しくて、ほとんど純子さんと里香ちゃんとの二人で過ごしていた。

その家はハイツのような造りで、一階と二階があった。隣接してお隣の家もあった。壁一枚で隣の家というのに違和感があったが、会社の社宅なので仕方なく住んだ。家自体は新築、見た目は綺麗だった。

部屋に入るなり、里香ちゃんはぎょっとした。

あちこちに人が立っているからだ。もちろん幽霊。里香ちゃんは霊が見える。

入ってきた自分たちをじろりと彼らは見た。

「ママ、ここってたくさん人が住んだの?」

「新築のはずよ」

最初純子さんは里香ちゃんに霊感があることを知らなかった。

引っ越し荷物がまだあるので、車でレストランへ出かけた。この日も夫はおらず、純子さんと里香ちゃんだけだった。

「3名様ですか?」

「いえ、2人ですけど」

「えっ? ああそうですか」

受付のウェイトレスが、ちょっと変な顔をしたが、通してくれた。

何だか変な気分で純子さんは食事をした。

家に戻ると、隣に住んでいる人が外に立っていた。

「こんにちは、今日から入った柏木です。よろしくお願いします」

「あれ? 今お出かけだったんですか?」

「はい、隣町で色々買ったり、ごはん食べたりしてました」

「そうなの……いや、さっきから音がひどかったもんだからね、注意させてもらおうかと思ってたのよ。壁一枚でお隣だとこうなるからねえ。嫌よね」

「あの、うちは朝から出ていたんで、うちじゃないところじゃありませんか?」

「いやあ、ここ以外はどの家も離れているし、あれ、何の音だったのかしら」

「どんな音でした?」

「バシーン、バシーンって床叩くような……それに子供が走り回るようなバタバタした音。運動会でもやってんのかと思ったわ」

そのハイツは一軒家の真ん中を半分に割ったような造りで、周りとは隣接していなかった。向かいは公園だし、道を挟んで古い民家があるが、人が住んでいる気配のない場所。

近くにお寺があった。だがひっそりとして、人が行き交う雰囲気でもない。

「この家、よく見たら周りから孤立した造りじゃないですか?」

「土地が余ってますって感じよね。東京から越してきたから、この広々した感じ好きなんだけど、壁一枚でお隣じゃあね」

里香ちゃんに異変が起きた。急に気分が悪くなってその場で吐いてしまった。慌てて純子さんが家に連れて行く。

「変な食べ物に当たったんじゃないよね」

「ママ、本当の事言うと、この家、人がいっぱいいるの」

「え? どういうこと?」

「さっきから、ここにいる人たちが『来るな』って言ってる」

その時、二階でガタンガタンと物音がした。誰かいる。それははっきりわかった。夫に連絡するが連絡がつかない。

「もしかして、幽霊見えるの? 里香ちゃん」

「うん。そうみたい」

純子さんは娘を信用することにした。

「どんな人がいるのか、描いてくれない?」

里香ちゃんが描いた絵は、顔が半分、首がない、それぞれの体の色が違うという不気味な絵だった。それも20人はいるという。

「今、二階にいるのも、そこにみんなが集まって相談してるから」

「な、何の相談?」

「どうやって追い出してやろうかっていうね」

里香ちゃんの顔が狐のような吊り上がった目に変わり、しわがれたような声に変わった。明らかにいつもの里香ちゃんじゃない。

二階での足音が早くなり、数人いる雰囲気がした。純子さんは寒気が止まらず、警察を呼び、待つことにした。

「ママに乗っかろうとしてる!」

「ええ! どこ?」

里香ちゃんの叫ぶ声と、指さす方向に、純子さんはたまらず神社で買っていたお正月の「破魔矢」を取り出した。

霊がいると思う方向に、その破魔矢を振り回した。

「霊が半分になった! 消えた!」

「本当に? これで退治してやる!」

しかしだんだんと里香ちゃんの表情が険しくなった。

「また霊が戻ってきた。増えてる気がする」

その時呼び鈴がなった。

警察官と隣の奥さんだった。

「奥さん、家にだれかいるんですって?」

「そうなんです。二階に足音が、しかも何人もいるみたいなんです!」

「私もさすがにうるさいなと思って、また注意しにきたんですよ」

年老いた警察官が話をじっと聞いて、静かに話した。

「私が子供の頃は、この辺りは処理場って言われてたんですよ」

「何の処理場なんですか」

「昔だからね、土葬ってわかりますか」

「骨にせずに埋めるってことですか?」

「そうです」

「じゃ、お墓だったってこと? 信じられない! 聞いてない!」

「いや、お墓ってほどいいもんじゃないです。処刑された人だかそういったお墓に入れられない人や、縁が切れた人、そういう人を重ねて捨てたと言われてるんです」

「どういうことですか」

「そこにお寺ありますよね。あそこは無縁の死体なんかを弔っていたんですが、どこかに埋めなきゃいけませんよね。それがここの場所だったんです」

「ええ!」

「江戸時代なんかは、処刑されたら死体はひっくるめて土に埋めてましたから」

「じゃあその霊が歩き回ってると……」

「最近、お寺の住職が入院していてね。息子さんも跡を継がないっていうし、弔う人がいないから出てきたのかもなあ」

純子さんと隣の奥さんはすぐに次の日に引っ越しを決めた。

里香さんは場所を変えたら、元気になった。やはり呪われた土地だったようだ。

後で建設会社に聞くと、確かに建てる時に掘り返した時、たくさんの人骨や髪の毛、服みたいなものが見つかったという。

それは、折り重なるようにあったという。死体が重ねて捨てられたのはあながち嘘ではなさそうだ。

だが今もその建物はあり、住んでいる人もいる。

建築関係の従弟に聞いてみた。

遺跡などが見つかると工事は中断となってしまうため、なるべくそういった掘り起こしの時は、何も出ないことを願っているが……言わずにおく業者もあるかもしれんね、と言葉を濁した。

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