処刑の生首マンション(広島県福山市) | コワイハナシ47

処刑の生首マンション(広島県福山市)

福山は工業が盛んで、中心街もよく整備されている。

岡山にほど近いが、ここや尾道などは「備後」と呼ばれ、広島市のある「安芸」地方とはまた様相も違うし、人の雰囲気も違う。方言も違うのだ。不思議と同じ広島なのに対抗心まである。

ただ、江戸時代には広島藩は50万石近い大きな外様藩、福山藩は10万石だが藩主は老中格の出る譜代藩だったことから、歴史的にも別々の考え方を持った地域であるのは確かだ。

一人暮らしを始めた輝美さんは中古の安いマンションを買った。実家は広島市だが、福山の人と結婚するのでその機会に買ったのだ

専業主婦になるのも何なので、すぐ近くの工場で働くことになった。

工場で手を洗っていると、後ろからおばさんが声を掛けてきた。

「あんた、あの××マンション? 家で何か見るでしょ」

「? ああテレビですか?」

「いや。幽霊」

「え?」

振り返るとニタニタ笑っておばさんが立っている。

「××マンション、住んでるってね」

「はい」

「あそこ昔、何だったかしっとる?」

「いえ、福山は全然知らなくて」

「処刑場じゃ」

輝美さんはぞっとした。

「いつの話ですか?」

「江戸いや、もっと前だな、戦国時代か」

「古戦場の跡ってことですか」

「詳しいことは知らんけど、あそこは出るって噂じゃけ、気いつけて」

「お祓いした方がいいですかね、もう買ってしまったんです」

「安かったじゃろ」

「まあ、相場よりは」

「うちの工場に来てた人もそこのマンションに住んどった」

「どうなりました」

「気がおかしくなって、やめた。海に落ちて死んだらしいけ」

「死んだ……?」

「噂じゃけのう。もう5年くらい前の話じゃ」

「私、住んだばかりで何も感じないですよ」

「そんなら良かった。霊感ある同僚は、あそこの入口で生首何本も見たっていうし、近所じゃ有名じゃ」

「生首? もう! 怖がらせないで下さいよ!」

「信じるか信じないかは、あんた次第じゃ」

そう言うとおばさんは笑って去って行った。

その日の夜から輝美さんは電気をつけて寝るようにした。

夫がいない平日は薄気味悪くて仕方がない。眠れない時はPCでブログを綴っていた。

深夜2時になっても眠れなかった。また窓に向かってPCでブログを書いていたときだった。後ろがキッチンになっているダイニングなので、時々冷蔵庫などが音を出す。そのたびに「ラップ音」かと思って慌てる。

その夜も「パシーン」という冷蔵庫の音が響く。

しかし妙に時間が開かずに音がする。いつもなら1時間に一回程度なのに。

水道がぽたぽたと突然流れた。

「後ろに誰かいる……」

人の気配がした。泥棒? いやそういうんじゃない、もっとじっと見るだけの何か……でも怖くて振り向けない。

PCからそっと前の窓を見た。こちらが明るいので、鏡のように映っている。

PCの上に輝美さんの顔。

そしてその後ろに無数の顔が映っていた!

武者風、兵隊、髪の長い女……そしてすべて首だけだった。

輝美さんは即そのマンションを売った。安く叩かれてもいいので、すぐ逃げだした。

物件を買う時は、昔を知る人や近所の人の意見を聞いた方がいい。

不動産会社でも、最新の事故物件でないかぎり、そこまで調査できないから。

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