大和ミュージアムを歩き回る海兵たち(広島県呉市) | コワイハナシ47

大和ミュージアムを歩き回る海兵たち(広島県呉市)

戦艦マニアの友人Mの話だ。

呉駅から少し行ったところに、有名な「大和ミュージアム」がある。戦艦大和の10分の1の精巧な模型があり、それでも相当大きく見ごたえのある場所だ。向かいの「てつのくじら館」では巨大な潜水艦が展示されており、海軍の港町「呉」の雰囲気が思う存分楽しめる。

近くには海上自衛隊の総監部もあり、港には自衛艦が浮かび、観光客が軍港都市だった昔をしのぶようにやってくる。

Mは何度もミュージアムを訪れ、どこに何の展示があるかまで覚えるようになるほど、この「大和ミュージアム」が好きだった。

日々に疲れたら、戦艦大和を見るのが好きなんだという。

最近できた彼女を連れて何度目かの「大和ミュージアム」に連れて行った。彼女は少し霊感がある。Mと付き合うのも「神のお告げ」だとか言って付き合い始めた位、変わっている。

最初ここへ来るのを彼女は嫌がった。女性はそうだろう。戦争と聞いただけであまり嬉しくない。怖いイメージがあるからだろう。

「ここ、何だか私を拒絶してる」

「ここが? 何でじゃ。行きたくないだけじゃろ?」

「違う。何かずっと見てる人もいるし」

見回すと休日のため、いつもより人は多かったが、二人凝視している人などどこにも見当たらなかった。

「ぎゃあ!」

突然彼女が発狂して座り込んだ。周りがじろじろと見ている。

「どうしたんじゃ?」

「水兵さんがこっちに、すごいたくさんやってくる!」

「ええ? 何言うとんじゃ!」

人の波があるにはあるが、水兵なんて一人も歩いてない。

「どんな格好しとんじゃ、水兵って!」

「白いベレー帽みたいなのにハチマキしてて、紺色のセーラー服着てる」

「そんな奴おらんぞ」

「どんどん増えてる! 何十人、100人くらいが歩き回ってる!

どうも彼女の目には、水兵がぞろぞろと館内を歩き回っているというのだ。

客として歩いていた元海上自衛官のおじさんがいた。様子がおかしい彼女に声を掛けてきた。

「どうしましたか? 気分悪いんですか?」

「はあ、彼女が、水兵がたくさん見えるって言うんですよ。いませんよね」

「いや、いるかもしれん」

おじさんが神妙な顔で胸ポケットから写真を取り出した。帝国海軍のハチマキがついた白い帽子の制服を着た、古い海軍兵の写真。

「お嬢さんに見える水兵はこんな格好ですか?」

「……そうです」

「そうか。やっぱりな」

「やっぱりってどういうことですか」

彼女が見たのは旧海軍の兵達だった。見える人にはたまに見えるらしい。呉港は海軍の港。元海自のおじさんは見えないが、何度か聞いたことがあるという。

「だからもう別れたよ。俺に向かっても発狂しはじめてさ。変な女だった。だけど何であの時、海軍兵の霊がうろついていたんだろうな」

それはM君、君の背中にすでに海軍兵が憑いているから……海軍兵たちは仲間に会いに来てるんだろうけど、君に見えないだけだよ、とは言えない。

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