もののけ妖怪に憑りつかれた子供(広島県三次市) | コワイハナシ47

もののけ妖怪に憑りつかれた子供(広島県三次市)

小学校5年生の夏休み。優太はおばあちゃんが住む、広島県の北にある三次市に行った。おばあちゃんはこの前まで元気だったのに、急に体調が悪くなり、寝込むようになったからだ。

優太はおばあちゃんが大好きだったから、少しでもお手伝いできればと思い、お母さんたちより先に着いた。

おばあちゃんは玄関まで出てきて喜んだ。思ったより元気そうなので安心した。

家に入るなり、疲れからか猛烈に眠くなった。古い大きな家、おばあちゃんの布団の隣に布団を敷いてもらい、優太はこんこんと眠った。いつのまにか夜になっていて、おばあちゃんも隣で寝ていた。

昔からある広い農家の作りで、生垣があり、庭があり、座敷は縁側があった。

寝ていると、

「おい」

低い響くような声が聞こえた。

目を覚ますと、畳の上に女の人の首があった。

「うわああ!」

次に見た瞬間には、何もなかった。

「うううう」

隣で寝ているおばあちゃんが苦しそうにしていた。

暗闇でうっすら、おばあちゃんの胸の上に一本の足が見える。

足に踏まれているのだ。

「おばあちゃん、おばあちゃん!」

おばあちゃんを揺り起こそうとする。

「邪魔するな!」

また低い声がとどろいた。その足が話している。足の上をたどって上を見ると……。

「ぎゃあああ」

足の上は胴体も手も無く、すぐ顔だった。それも時代劇に出てくるような、日本髪の女の人。神が乱れて、目が血走っている。妖怪のようだった。絶対に人間じゃないのはわかる。

「お前もこの家のもんか?」

「違います! 違います!」

優太は怖くなって手を合わせた。

目を閉じ、開けるとその妖怪はいなかった。でも苦しそうなおばあちゃんが心配になり、救急車を呼ぶことにした。心臓の発作を起こしたようで、即入院になった。

ベッドのそばで寝ていると、大きな力で自分が宙に浮くのを感じた。

目を覚ますと、本当に大きな手で包まれ、天井まで持ち上がっている。

「降ろせ! 降ろせ!」

叫ぶが声が出ない。うなされるような声がひびいていると通報があり、病院の医師がかけつけ優太を看始めた。優太が気づく。

「おい、君大丈夫か?」

「あ、はい……でも昨日から変なものばかり見るんです」

「何を見たんだ」

優太は昨夜から見たものを全部話した。医師は初め驚いていたがうなずき、おばあちゃんに話しかけた。

「最近、比熊山に登りましたか?」

「……はい。一か月前にふもとの神社に行きました」

「何かありませんでしたか? ケガするとか」

「そうです、境内で誰もいないのにぶつかって、倒れました」

「誰もいないのに?」

「不思議なんですけど、ドンって肩がぶつかったのは確かなんですけどね」

「体調を崩したのはそれから?」

「そういえば……そうですね。朝起きると胸が苦しくて」

「そうですか……知り合いに祈祷師がいます。すぐにお祓いしてもらいましょう。そこのお孫さんも影響を受けてる。家もお祓いしないといかん」

「病気じゃないんですか?」

「私の祖母が昔言ってたんですけど、あの比熊山で妖怪に肩がぶつかると、死ぬまで苦しめられるって聞いたことがあるんです」

すぐおばあちゃんと優太はお祓いをしてもらった。

その医師は三次市に代々住む人だったので、この土地にある妖怪伝説を知っていた。

「いのうもののけ」

その伝説は嘘ではないようだ。

主人公の稲生武太夫は孝行息子で妖怪を追いはらった。魔王がやってきて、「難」を与えるのが仕事だったという。その「難」は木槌だったという説があり、今も広島市の東区の「国前寺」に木槌が祀られている。

そして比熊山には「たたり石」もある。

他の地域でもそうだが、神に関連する場所で、見えないものに肩がぶつかった時は、何か悪い事があると思ってお祓いを受けた方がよい。

お祓いの後、国前寺にも参り、今は何も起きず、おばあちゃんも心臓の発作はなくなった。先日寿命で亡くなったが、優太は今もその体験を思い出しては、「難」が起きるのは信心が足りないせいだと、広島を訪れている。

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