ただの泥じゃない(沖縄県) | コワイハナシ47

ただの泥じゃない(沖縄県)

今から五年程前のこと。金武町に生まれた儀部めぐみさんは、高校生の頃、実家の近所を自転車で走っていた。その辺は田んぼが広がる風光明媚でのどかな場所だった。

しばらく農道を自転車で走っていると、目の前の田んぼの中から、何かがむっくりと起き上がってくるのが見えた。

それは人の形をしており、助けを求めるかのようにもがいていた。

てっきり農家の人が泥の中に落ちたと思った儀部さんは、「大丈夫ですか?」と言いながらその泥に向かって近づいた。

ところがその泥は、もがきながら農道にのぼってきて、両手を上にあげた状態で儀部さんの前に立ちはだかった。

それは人間の様でいて人間ではなかった。

泥で形作られた人の形をした何かだった。

儀部さんは悲鳴を上げて、必死で自転車を漕いで逃げ出した。後ろを振り返ると、人間の形をした泥がよろよろとした足取りで農道の上を追いかけてくるのが見えた。

「助けて! 助けて!」

儀部さんは必死になって叫びながら自転車で逃げたのだが、しばらくすると後ろの泥人間は、農道の上で転んだらしく、「びしゃっ」という凄い音とともに、その場に飛散してしまった。

あとにはただの泥が、農道の真ん中でうずたかく積まれているだけだった。

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