黒いローブの男 黒魔術に関する話 その五(沖縄県) | コワイハナシ47

黒いローブの男 黒魔術に関する話 その五(沖縄県)

黒魔術に関する話 その五

えりこさんたちと出会ってから、四日後の夜のこと。大城牧師は二階のベッドで眠っていた。隣のベッドには妻がいて、三人の娘たちは隣の部屋で眠っていた。

夜中に、何かの気配でふと目が覚めた。妻か、もしくは娘がトイレにでもいったのだろうと思ったが、どうやら違うことに気がついた。

獣の匂いがする。

蒸し暑い、あの昼間に、黒魔術をかけられたと信じている女性から漂ってきたと同じ、あの野良犬のような匂いが部屋に充満していた。そして何かが近くにいるのも感じられた。

と、隣の部屋から声が漏れてきた。娘の一人がうなされているようだ。

大城牧師はすぐにベッドを抜け出し、ゆっくりと娘たちの寝ている部屋のドアをあけた。

そこに、それがいた。

おそらく匂いの正体であるはずの、ものが。

真っ黒い、人型をした背の高い人物が、部屋の中にすとんと立っている。身の丈2メートルはあるだろうか。肩から長いローブのようなものが垂れているのが、はっきりとわかった。それは脚の辺りまで伸びて、スカートのようにも見えた。

それは娘の一人の上に手をかざしていた。それにあわせて、娘が呻き、うなされていた。

大城牧師は部屋に入ってそれをやめさせようとした。

だが身体がいうことを利かない。まったく動かないのだ。

口もいうことをきかず、大声を出すこともできない。

大城牧師は戸口で立ったまま金縛りにあってしまった。大城牧師が見ている前で、その黒いローブの存在は娘たちの上に順番に立ち、悪意のこもった黒い霧を彼女たちの上に注ぎ始めた。順番に娘たちはうなされ、小さな悲鳴を上げた。大城牧師はなんとか身体の呪縛を解こうと心の中で神に祈りを捧げたが、金縛りはしばらく解けなかった。

やがてその存在は大城牧師に気づいたようであった。顔のない顔を向けて、ゆっくりとした足取りで大城牧師の方へと向かってきた。それはあっという間に目の前まで迫ってきた。はためくローブが、身体に触れるのがわかったぐらい、それは近くにいた。

大城牧師は必死に抵抗した。そして次の瞬間、目が覚めるとベッドに眠っていた。

夢だったのだろうか?

隣を見ると、妻が起きていて心配そうな表情を浮かべていた。

「あなた、うなされていたけど」

「ああ、嫌な夢を見ただけだ。もう大丈夫だよ」

次の朝、大城夫妻がキッチンで朝食の準備をしていると、二階から娘たちが悲鳴を上げながら降りてきた。どうしたのかと尋ねると、どうやら三人ともまったく同じ夢を見たらしいことがわかった。

夜中に寝ていると、肩からローブかマントのようなものをかけた背の高い男性が現れ、彼女たち一人一人に呪文をかけて去っていったという。三人が見た夢の印象はまったくといっていいほど似通っていて、それで彼女たちは怖くなって悲鳴を上げたらしい。また三女はドアに父親の姿を認めたが、黒い鎖のようなものが動けなくしているのまで見えたといった。

この件があってから、大城牧師はジョナサンとすぐにでも直接話をすることに決めた。自分だけが悪意の攻撃の対象にさらされるのは耐えられるが、家族まで攻撃されるのは黙ってはいられなかった。

そしてその日の午後に、えりこさんのお母さんから電話がかかってきた。

えりこさんは親戚などの説得によって、実家に引き取られていた。ジョナサンとは離婚する方向で話し合いが進んでいるという。

それを聞いて大城牧師は一安心したが、それでも昨夜に体験した夢とも現実ともつかぬことに対しての印象はぬぐえなかった。

あのローブの男性は一体誰なのだろうか?

今でも大城牧師は、眠れぬ夜にふと、思い出すことがあるという。

関連話
黒魔術に関する話その一

黒魔術に関する話その二

山城さんの話 黒魔術に関する話 その三

大城牧師の話 黒魔術に関する話 その四

すべての終わり 黒魔術に関する話 その六

シェアする

フォローする