メーヌカー井戸の祟り(沖縄県) | コワイハナシ47

メーヌカー井戸の祟り(沖縄県)

宜野湾市のとある小学校の横には、文化財にも指定されている有名なメーヌカーという井戸がある。そこは霊験灼かな場所とされ、今でも数多くの人が民間信仰の要として参拝に訪れる。カー(井戸)といっても本土の井戸のような場所ではなく、泉のように湧き水が溢れ出る場所になっており、琉球メダカの棲む小さな池のようになっている。

そこにはときおり訪れる参拝者たちが、十円玉や一円玉などを水の中、もしくは香炉の近くにお供えしていく。参拝の金額は沖縄では決まっていないのだが、だいたい硬貨三枚を御供えするという風にいわれている。一枚は神様に、一枚は自分に、一枚は御先祖様に供えるというのが、一般的にいわれていることである。

隣の小学校の三年生だったケンジくんが友達と一緒にメーヌカーを訪れたとき、旧盆の時期もあったのか、池の中には硬貨がキラキラとたくさん輝いていた。

「お腹すいた。うまい棒買おうぜ」ケンジくんが言った。「それにコーラも」

「お金持ってないばーよ」友人の一人が言った。

「えー、あそこにいっぱいあるし」ケンジくんは池の中を指差した。

「えーフラーよ。あれは神様のお金やっし。あれを取ったら、お前くるされる(殺される)ばーよ」

「ううん、くるされんし。借りるだけやっし」

そういってケンジくんは靴のままメーヌカーの池の中に入っていって、十円玉で三百円分を取って戻ってきた。

「駄目ばーよ。おれ、呪われたくないやっし!」

友人は激しく抵抗して、その硬貨には絶対触れなかった。それでも「見てろ」と言い残すと、ケンジくんは顔なじみのオバアが経営する近くの一銭マチヤー(駄菓子屋)まで友達と一緒に向かった。

「オバア、うまい棒ちょうだい!」

ケンジくんは大声でそういってうまい棒を買った。いつもは一本しか買わなかったのに、その日はメーヌカーのお金で三十本も買えた。一銭マチヤーの外でケンジくんはうまい棒のパッケージを開け、ボリボリと食べ始めた。

「えー、お前たちも食べれー」

そうケンジくんは勧めたのだが、友人たちは怖がって一向に食べようとしない。

「お前、呪われるやっし」友人の一人が吐き捨てるように言った。

「でもさ、借りただけやっし。あとで母ちゃんにもらってから返すから、問題ないばー」

友人たちはそれを聞いても無言で、一人、また一人とケンジくんの前から消えていなくなった。

その日の午後のことである。母親が帰って来たので、ケンジくんはメーヌカーから取ったといわずに、「友人の○○くんから借りた」と嘘をついて、母親から三百円を受け取った。そして家を抜け出して、夕方メーヌカーまでやってきたのだが、池を目の前にして三百円を戻すのをためらってしまった。

その代わり、先ほどの一銭マチヤーで、さらにうまい棒とジュースを買った。そして公園に行って、ジュースとうまい棒を食べながら、近所の少年野球が練習しているのを眺めていた。すると、ふと誰かが肩を「ぽん、ぽん」と二回叩いた。

びっくりして振り向くと、そこには五十メートル四方、誰もいなかった。芝生と林しかなかった。気のせいだと思ってまた野球を見ていると、また誰かが「ぽん、ぽん」と肩を叩く。びっくりして振り返るが、誰もいない。

さすがにケンジくんも怖くなった。

一目散に家に帰り、母親をつかまえて「あと三百円ちょうだい!」とせがんだ。

「ケンジ、あんたさっき三百円あげたでしょ」

「お菓子食べたくなった」

「もうやめなさい。今日は終わり」

「でも三百円ちょうだいってば」

「お菓子なら冷蔵庫にジミーのケーキがあるからそれ食べときなさい」

「うまい棒がいい」

母親は仕方ないという風に、ケンジくんに財布から三十円を渡した。

「ううん、足りんし」

「何言ってるの。うまい棒だったらこれで三本も買えるわよ」

「買えん」

「何買うつもりなの?」

「うまい棒」

「うまい棒が三百円もするわけ?」

「新しいうまい棒は三百円するやっし」

「あんた馬鹿じゃないの。さっさと宿題しなさい」

母親にはとうとうメーヌカーから盗んだとは言えず、三十円しかもらうことが出来なかった。ケンジくんはその三十円を握り締めてメーヌカーに戻った。

「ごめんなさい、お母さんは三十円しかくれませんでした。あとのお金は今度返します」

そういって池にお金を投げようとしたのだが、井戸の隅のほうでウガンしている二人の女性の姿を見つけたので、恥ずかしくなってケンジくんはお金を投げずにいそいそと退散した。そして一銭マチヤーに寄り道して、結局大好きなうまい棒を三本買った。

「あんたよ、今日は一体何本買うつもりかねー」

その日はケンジくんにとって、一銭マチヤーのオバアもいぶかしむほどのうまい棒大量買いの一日だった。

そして一日が終わり、ケンジくんは寝巻きに着替えて就寝した。

すると、足音がする。どこからともなく、コツコツ、コツコツと響いてくる。そして何度も肩を「ぽん、ぽん」と叩かれて目を覚ました。でも両親も兄弟もぐっすり眠っていて、誰もいない。

次の日、目を覚ますとお腹を壊していた。熱もある。学校を休む事になり、病院にいって薬を処方してもらった。

その帰り道のことである。母親がいきなり「ケンジ、あんた何か憑いているかもしれないからメーヌカーに寄っていこうね」と言った。そしてケンジくんと母親はメーヌカーに寄って、母親は三百円を香炉のそばに置いた。

「一つは神様のため、一つはケンジのため、一つは亡くなったオジイのため」

そして二人でウート―トゥーしてから家に帰った。すぐにケンジくんの病状は良くなったが、その頃学校ではケンジくんの話題で持ちきりだった。

「三年生のケンジくんは、メーヌカーから盗んだお金でうまい棒を買ったので呪われた」

今でも子どもたちの間では語り継がれている。世にも恐ろしい、メーヌカーの呪いであった。

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