双子の伝言(沖縄県) | コワイハナシ47

双子の伝言(沖縄県)

嘉手納家の双子の娘、サチホさんとカナミさんは、かなりの難産で生まれた。もしかしたらお腹の中の赤ちゃんは、どちらかが流産になる可能性がありますと、お母さんの恵さんは医師から言われていた。なので恵さんは、米子オバアにお願いして、集落の拝所を全部回って、二人の子どもが安全に生まれてくるように祈願をした。

サチホさんとカナミさんは、恵さんと同じ誕生日の四月十一日に生まれた。生まれる前のことを、二人は四歳くらいになるまでずっと覚えていた。

サチホさんとカナミさんは、一面に黄色い花が咲いた広場のような場所にいて、女神様のような髪の長い美しい女性と話し合っていた。女神様が言って来なさいというので、二人は笑顔でその場所からトンネルを抜けて、この世界へと降りて来たという。しかし大きくなるにつれ、その記憶はだんだんと薄れてゆき、中学生になった今では、一つも思い出すことが出来なくなっていた。

ある日の夏休み、姉のサチホさんは親戚のいる東北へと遊びに行っていた。その日は朝からカナミさんはめまいがした。生理前だったのでそのせいかとも思ったが、だるくてだるくて仕方がない。朝から休んでいると、昼すぎに玄関から凄まじいガラスの割れる音がした。

見ると、父親が大事に飼っている水槽のアロワナが蓋のガラスを突き破って床の上にぐったりと転がっていた。すぐさまアロワナを水槽の中に戻したが、すでに死んでしまっていた。

「何かおかしなことでも起こるのかしらね」と、死んだアロワナを前に恵さんがぽつりと言った。

さらにめまいがひどくなったので、カナミさんは自分の部屋で眠ることにした。すると白昼夢のように、姉のサチホさんの顔が目の前に現れた。どうしても電話しないといけないという思いがふつふつとわき起こって来た。そこで姉に電話をしてみたが、相手は電話を取らなかった。

そのまま二階の自分の部屋で眠ったが、溺れる夢を見て目を覚ました。幼い頃、北谷の室内プールに行った時に、足がつって溺れそうになった時の夢だ。姉もそばにいるが、水流に流されて彼方へと消えてしまった。お姉ちゃん、助けて、と呼んでみるが、返事はない。そのままカナミさんは流されて、奈落の底へ落ちて行く。

そこで目が覚めた。母親が一回から悲鳴のような声でカナミさんを呼んでいる。

「お母さん、どうしたの?」眠たい目をこすりながら、カナミさんは下へ降りた。

テレビに、まるでミニカーをお風呂場の水槽の中で流しているような画像が映っていた。

「何なの? これ?」

「地震が起こったのよ。しかも東北で」母親の声は今にも泣きそうだった。

お姉ちゃんが?

カナミさんは凍り付いてしまった。すぐさま電話を入れるが、携帯はおろか、親戚の家も通じない。ありとあらゆる方法で連絡を入れようと試みるが、すべて失敗に終わった。父親も昼過ぎには家に帰って来て、連絡があるまで自宅にいることにした。

しかし時間が経つにつれて、それが未曾有の災害であることがわかってきた。夜には親戚一同が家にやってきて、嘉手納家を励ました。だいじょうぶ、サチホちゃんは無事でいるからねと、彼らはそういって励ますのだが、カナミさんには不安で仕方がなかった。

そこでその夜、早めにベッドに入ったカナミさんは、心の中で姉と会話してみようと思いついた。

実は幼い頃から、二人は時折離れていても意思が通じ合うことが何度かあった。初めて行った那覇の三越デパートで迷子になった際、二人がすぐさま母親の元に戻れたのも、この才能が大きく関わっていた。

そこで今回も姉が生きているならばきっと意思が通じ合うだろうと、カナミさんは意識を暗闇の彼方に飛ばして、姉の名前を呼んだ。

するとしばらくして、返答のようなものがあった。高台にあるどこかの公園。赤い色のジャングルジムがあり、そこにみんなが集まっているような風景が見えてきた。そこに姉がいて、何か喋ってる。ああ、これは姉が生きている証拠だ。もう心配ない。

カナミさんはすぐさま下へ降りて、心配そうにテレビを見ていた母親にこう伝えた。

「お姉ちゃん大丈夫だからね。さっき話した」

周囲にいた親戚たちは話についていけなさそうにポカンとした顔つきで見つめていたが、恵さんだけはカナミさんの顔をまっすぐに見つめて「わかった。ありがとうね」といった。

「電話通じたのか?」親戚の一人が聞いた。

「電話じゃないのよ」と恵さんが応えた。

その後のことは詳しく話す必要はない。

サチホさんは高台の公園に避難していて無事だった。ジャングルジムにもたれて、避難した親戚たちと話をしている時に、ふと妹が付けている香水の匂いをかいだ。ああ、妹が心配してくれている、私は大丈夫だからねと、彼女は返事をした。その返事は風に乗って、遠い沖縄までたどり着いたのかもしれない。

嘉手納さん一家は、サチホさんが帰って来てから、一緒にくだんの拝所にお礼を言いにいった。いつかの夜のことを思い出し、恵さんたちは家族の分の折鶴をガジュマルの枝にぶら下げた。今でも何かあれば、ぶらさげることがあるのだという。

「でも雨が降る前には片付けますよ」と恵さん。「ぐちゃぐちゃになったら、神様に『お前あの時にこんなことをワシに言っときながらひどい奴だ』って言われかねませんからね」

もしあなたが、折鶴のぶら下がっている拝所に行ったら、ぜひともそばの公民館を訪ねてみて下さい。

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