星神社(高知市五台山) | コワイハナシ47

星神社(高知市五台山)

星神社は高知県高知市五台山の中腹にある神社。正式名称は妙見宮星神社。五台山小学校から四国霊場第三十一番札所である竹林寺まで登る道中にある。

年に三、四回、高知市のライブハウス「カオティックノイズ」での怪談ライブに呼んでもらえるのだが、そのイベント後の打ち上げで、現地の方から毎回高知の心霊スポット情報を教えてもらえる。その中で最も興味深かったのがこの星神社。星神社は山自体が心霊スポットともされる五台山の麓から、急勾配の長い石段を登り続けたその先にある。そして真偽の程は定かではないがその昔、疫病患者たちを神社から何人も落とす風習があったとされている。

今回の探索は初めての単独行動。高知という遠方の地で、街灯もない漆黒の闇の中、一人で急勾配の石段を登る恐怖。幽霊も怖いが、転落が怖い。そして、すぐに後悔することになる。

とにかく後ろを振り返るとバランスを崩して落ちてしまう可能性があるので、ひたすら上を見て登る。ひたすら、ひたすら登るのだが、視界は懐中電灯で照らされた目の前の石段のみ。そして、落ちないようにと神経を研ぎ澄ませれば研ぎ澄ませるほど、周りの音がクリアに聞こえる。クリアに聞こえるからこそ、余計な音まで聞こえてしまう。

〝ザッ、ザッ、ザッ、ザッ〟

これは自分の足音だ。

〝ザッザ、ザッザ、ザッザ、ザッザ〟

足音が二重に聞こえる……?

〝ザッザ、ザッザ、ザザッ、ザザッ、ザザッザ、ザッザ〟

違う、もう一人誰かが石段を登っている。

だめだ、怖い。幽霊やっぱり怖い。

僕は石段から外れ、横の林に避難する。避難するといっても、もちろん林も急勾配。物理的危険度はさらに高くなる。ズルズルズルと滑り落ちそうになるのを、なんとか堪えながら木にしがみつく。何をやっているんだろう自分は。

ふと視線を暗闇の奥に向ける。木と木の間に小さな祠が見えた。その場所はさらに危険な位置にある。

「行くしかないだろう」

何故そう思ったかはわからない。わからないけど、僕は木々にしがみつきながら祠を目指した。

ボロボロの祠。忘れ去られた祠。

それと対峙した時、〝この祠の扉は開けてはいけない〟と直感した。大袈裟だが、魔界に通じる禁断の扉のように思えたのだ。

しかし、だからこそ開けなければいけないような気がした。それは言葉ではうまく説明できないのだが、何故かそう思ってしまったのだ。

僕はその小さな扉に手を掛け、ゆっくりと開帳した。

中は……見るも無残な有様だった。

神棚は崩れ、御神体は倒れ、供物が転がり、枯れ草が散らばっている。なんて罰当たりな、なんて悍おぞましい光景だろう。〝見てはいけないものを見てしまった〟、そんな感覚に襲われる。

しかし何故だろう。その後僕は「大丈夫、これ以上の恐怖はない」と思えた。そしてその瞬間、不思議と本当に何も怖く感じなくなった。

祠の上を少し登ると、突然数基の墓石が姿を現した。急勾配の林の中、何故こんな場所に建てられてあるのか。暗闇に浮かぶ古びた墓石の異様さに対し、恐怖や不安よりも検証が先に立つ。もしかしたら石段から落とされたとされる疫病患者の方々を鎮めるための石碑だろうか? そんなことを考えながら冷静に墓石を眺めるも、結局手掛かりは掴めなかった。

林から石段に戻り、再び星神社を目指す。数分前まで自分ではない足音に恐れおののいていたはずの石段を、スイスイと上がる。そして頂上に辿り着いた。

星神社の境内はとてもシンプルで、何の飾り気もない小さな神社だった。しかしその静か過ぎる佇まいに、余計に何か得体の知れない力を宿しているような、そんな雰囲気が醸し出されていた。

「星神社」は全国に数多く存在する、北極星、北斗七星、隕石を祭神とする神社だ。また、星神社のある山は、「妙見」という名前が付けられていることが多い。

日本には古来より妙見信仰というものがあり、一般には仏教でいう北辰妙見菩薩に対する信仰をいうが、その元になっているのが道教における星辰信仰、特に北極星・北斗七星に対する信仰である。ちなみに北極星のことを古代中国では「北辰」と呼ぶ。

実はここ高知県五台山には星神社が三つある。高須大谷地区(五台山北西側)の星神社、長江地区と高須大島地区の境にある(五台山北東側)星神社、そして僕が登った鳴谷地区(五台山南側)の妙見宮星神社。

地元住民の話によると、星神社は女性の神様を祀ってあるらしく、お姉さんが南側にある星神社で、「古来より静かなるを好む」とのことで社殿内での祭りしか行われないという。

一方、北側の二つの星神社は妹だそうで、秋の祭りには立派な御神輿が出るという。

そしてこの三つの星神社を地図上で見てみると、ほぼ正確な二等辺三角形に位置しており、その頂点が姉に当たる南側の星神社に当たる。実に意味ありげな配置である。

僕は今回、地元の方が知る未開の心霊スポットとして訪れたわけだが、何か別の、未知なる力をこの場所で授かってしまったのかもしれない。

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