烏の置き土産(東京都 麻布十番) | コワイハナシ47

烏の置き土産(東京都 麻布十番)

息子が四歳になるまで住んでいた麻布十番のマンションのベランダには、よく一羽の烏がやってきた。ベランダのフェンスに引っ掛けた鉢植え用のコンテナを荒らすので、見つけるたびに追い払っていた。

烏は窓ガラスを叩いたぐらいでは逃げていかなかった。ベランダに飛び出しても、すぐには逃げずに私をじっと見ていることもあった。図々しさを憎らしく感じると同時に、私の力を推し量っているに違いないと思うと、いつか襲いかかってくるんじゃないかと恐ろしくもあった。

春、五月頃のことだったが、花を植えたコンテナの土がほじくりかえされていて、また例の烏の仕業だろうと思った。それまでにも同様のことがたびたびあったのだ。

ところが、このとき、土を直そうとしたところ真っ赤な生肉の欠片が埋められていることに初めて気づいた。

焼肉屋で出されるようなスライスされた肉だった。あっと思って、コンテナの花を植え替えることにして土を全部出してみたら、何切れも出てきた。古いものは腐って悪臭を放っている。そういえば、ここのところコバエが多いと思っていたのだ。烏の仕業だったか。

腹立たしく思いながら、土に埋まっていた肉をビニール袋に入れて捨て、花を綺麗に植え替えた。

次の日の朝、花の水やりのためにベランダに出ようとして、あやうく鳩はとの死骸を踏んづけそうになった。

鳩の死骸には、首がなかった。

私は悲鳴をあげた。

すると、悲鳴に応えるかのように、すぐそばで烏がカアと鳴いた。足もとに気を取られて目に入っていなかったが、さっきからそこにいたようすで、昨日、烏が肉片を埋めていたコンテナの端にとまっていたのだ。

私と目が合うと、バタバタと飛び去った。

もしやと思ってコンテナを調べると、鳩の生首が土の中に埋められていた。

なぜかそれきり、烏が来ることはなかった。

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