ふたたびの牛 牛窪地蔵尊(東京都渋谷区) | コワイハナシ47

ふたたびの牛 牛窪地蔵尊(東京都渋谷区)

渋谷区の笹塚交差点近くにある牛窪地蔵尊は心霊スポットとして知られている。一七一一年(正徳元年)一〇月に建立されたそうだが、戦国時代にはここで牛を使った股裂の刑が行われていたそうだ。

左右の足首に縄を掛け、それぞれの脚を縄で繋いだ牛に引っ張らせて、股を引き裂く残酷な刑罰で、血だまりが出来るからというわけではあるまいが、このような酷刑は窪地で行う習わしだったともいう。これが牛窪の地名の由来ともなっている。

地蔵尊建立の前に、牛窪に疫病が流行った。これが処刑された罪人たちの祟たたりだと言われたのが地蔵尊建立のきっかけだそうだ。

牛窪地蔵尊のあたりは幡ヶ谷や地方の農民が雨乞いをする場所でもあったそうだから、パワースポットであることは間違いないが、怪奇現象がよく起こるという情報もあったから、大いに期待して訪れた。

しかし、何も起こらない。

落胆しながら帰途につき、笹塚駅から電車に乗った。午後二時の車内は空いていて、私は座席に腰を落ち着けた。すると、座ってすぐに友だちからラインが届いた。

見れば、牛の写真である。友だちは家族で牧場に遊びに行き、家畜の牛を撮って送ってよこしたのだった。

しばらくして、私は乗り換えるために電車をいったん降りた。途端に、二本足のホルスタインが目に飛び込んできた。牛の着ぐるみを来た人が歩いていたのだ。

都会に変人は多い。とはいえ、また牛である。

もうないだろうと思っていたら、夫から電話が掛かってきた。

「今夜は焼肉屋に行かないか?」

なんとなく牛肉が食べたい気分になったのだという。

承諾して、再び電車に乗った。

吊革につかまり、ふと、目の前に座っている親子連れの、三つ四つに見える子供が抱きかかえているぬいぐるみが牛であることに気がついた。

幼児は私の視線に気づいて、こちらを睨み返しながら牛をしっかりと抱かかえ直した。

安心して。取らないよ。

牛は、今はちょっと怖いからね。

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