天冠【三角頭巾】二題(埼玉県) | コワイハナシ47

天冠【三角頭巾】二題(埼玉県)

埼玉県の北部には葬儀の際に参列者も死装束を着る習俗があった。最近では簡略化されて、小さな金剛杖を男女問わず配り、男性に限って頭に着ける白い天冠(三角巾)だけでよくなったと聞く。県内の葬儀社の人に訊いたところ、それすら次第に行わなくなる傾向が見られるという話だ。

埼玉県羽生市で生まれ育った五八歳の女性、望月さんは、自分が憶えている限りでは、昔、一つ年下の従弟が五歳で亡くなったときは、親戚全員が天冠を着けたばかりか、自分を含めた仲の良かった子供たちは白い浴衣まで着せられたと話す。

「そのとき私はもう小学校一年生で記憶は割合はっきりしています。出棺のとき、私は死んだはずの従弟と手を繋いでたんですよ。二つ上の私の姉もそのことをうっすら憶えてました。姉は『そのときは、やっぱり従弟が死んだのは間違いだったんだと思った』と言ってます。従弟は酷い交通事故で、たぶん顔が崩れていたんじゃないかと思いますが、亡骸を見せてもらえなかったので死んだことに現実感がありませんでした」

望月さんと手を繋いでいた従弟は、彼女とそっくり同じ衣装を身に着け、傷ひとつない顔で機嫌良さそうにしていたという。「天冠がずり落ちてくるのを盛んに気にしていたので、私が紐を結び直してあげたんです。不思議ですねぇ」と望月さんは首を傾げた。

東京都世田谷区出身のネイリスト、奥山さんは、お盆休みに世田谷区内の父方の実家に親族で集まったときのことを語る。

「昔からの夏の恒例行事で今でも集まってるんですけど、私が小学校の四年生のとき、夕ご飯の後でいちばん仲が良い同い年の従妹と一階の庭に面した和室で遊んでいたら庭の方がボウッと明るくなった気がして、そっちを見たんです。そしたら、頭に三角の布をつけた幽霊が立ってたんですよ。白い着物を着て膝のへんから下が透けながら消えてる、絵に描いたような幽霊らしい幽霊でした。大人たちが集まってる部屋に走って行って『幽霊が出た!』と従妹と騒いだけど、お祖母ちゃん以外、誰も信じてくれませんでした。お祖母ちゃんは『ご先祖さまの霊だろう』って言って、私と従妹にお経を唱えさせました。それから二泊して翌日は帰るという日の夜にも、二階の部屋の窓から見ました。門の方へスーッと滑るみたいに移動して、門の外へ出た途端に透明になって消えてしまいました。天冠て言うんですか?例の三角のを着けてたから、同じ幽霊だと思います」

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