チョマトー(害を受ける沼)の怪(北海道帯広市) | コワイハナシ47

チョマトー(害を受ける沼)の怪(北海道帯広市)

アイヌ語で「害を受ける沼」という意味のチョマトー。

それはは帯広市にある小さな沼の事。

ここは明治より前のアイヌ人同士の紛争があり、古戦場の跡といわれている。

この沼が真っ赤に染まるほど、亡くなった兵達の遺体で埋め尽くされたという。「血妖魔沼」とも呼ばれ、その頃の慰霊碑もある。

このチョマトーを見に来た時は夏で、蚊が発生しているし何だか汚れているイメージだった。水草の匂いというか、水の生臭い匂いが私の体にまとわりついた。

北海道ではあまり聞かないが、カッパでも出そうな感じというか。精霊が出るというより、妖怪が出そうな雰囲気だった。

「害を受ける沼」という言葉の意味について考えていた時だった。

車道の方からけたたましい音が響いた。

「キー! ガシャン」

「キャー!」

車道に出てみると、乗用車と自転車がぶつかって、自転車に乗っていた男性が血を流して倒れていた。

道が曲がりくねっているので、タイヤの巻き込み事故も多いのかもしれない。

そのうち、パトカーや救急車のサイレンが響き、動かない男性を担架に乗せて救急車が出発した。

私はその後何となく体調が悪くなり、帯広のホテルに戻り熱を計ると38度あった。滅多に風邪をひかないんだか……と思いホテルで寝ていると、アイヌ人同士が戦っている夢を見た。

血だらけになった沼に、死んだ兵士を突っ込んでいく。深い沼のようで、死体はどんどん飲み込まれていく。

でも水面から体が見えると、猛烈な吐き気が襲い、私は目を覚ましトイレに駆け込んだ。

あまりに生々しく凄惨で、それから眠るのが怖くなった。

3日ほど熱も下がらず、北海道旅行はホテルで寝て食べて終わった。

東京に戻った後も不思議なことがあった。

異常に喉が渇き、水が飲みたい。熱が体にまとわりつくようで、汗が止まらない。常に全身が濡れているような気持ち悪い状態だった。

またうとうとすると、今度は水面に映っていたアイヌ兵が一人一人蘇ってくる。無論それは霊で、体は中に沈んだままだった。

その一人の兵の霊が、沼を指さしている。

そして、事故が起きた道を指さす。

首をふり、悲しい顔をしていた。

ふと我に返る。今のが夢なのか、霊が私に会いに来たのかわからないほど、リアルだった。

起きて、アイヌの昔話を読みふけった。

元々ここはアイヌの長老が「トウカムイ」神のいる沼と名付けていた。

神聖な沼は、紛争や遺体を沈めたことで、汚れてしまった。

だから、神はいなくなってしまい、害のある沼に変わったのでは? という思いを巡らした。水が汚れた場所に良いことが起きると思えない。

その後になり、チョマトーの改修工事があり、事故の多い道もまっすぐになったと聞いた。その時、人骨が掘り起こされたという。

あのアイヌ兵のものだろう。

沼も縮小してこぎれいになったと聞いた。

沼と道を指さしたアイヌ兵の霊が、もとの「トウカムイ」になり、神がこの地に戻ることを意味していたのかもしれない。

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