事故 酢加山公園近くの明治通り(東京都北区) | コワイハナシ47

事故 酢加山公園近くの明治通り(東京都北区)

二〇〇〇年(平成一二)頃の夏、午前三時頃、北さんが新聞輸送トラックを運転していると、突然、目の前に白っぽい人影が現われた。ブレーキを踏んだが間に合わず、「ドンッ」と鈍い衝突音がすると同時に、なんともいえない嫌な感触がハンドルから両手に伝わり、人をはねてしまったことを彼は悟った。

「たいへんなことをしでかした!僕の人生、終わってしまった!」

咄嗟に妻子の顔を思い浮かべて目の前が暗くなったが、まずは被害者の生死を確かめねばならない。まだ助かるかもしれない。北さんは一縷の望みにすがり、よろよろと運転席から外に出た。

場所は東京都北区滝野川一丁目、飛鳥山公園近くの明治通り(国道一二二号)の路上である。北さんのトラックは王子方面から池袋方面へ向けて走っていた。荷台は空で、もうすぐ家に帰れるはずだった。絶望感に打ちひしがれながら、はねてしまった人を探した。

しかし見つからない。腹ばいになってトラックの下も見てみたが、何もない。中央分離帯の植え込みの中や反対車線の方まで探したが、事故に遭った人の痕跡すらなかった。

そのうち、北さんはおかしなことに気づいた。午前三時過ぎという交通量が少ない時間帯であるにしても、トラックの運転席から降りたときから、一台も車が通りかかっていないのだ。毎日似たような時間帯に通る道であり、いつもならこのぐらいの時刻でもトラックやタクシーなどがちらほら走っていることを北さんは知っていた。

反対車線にも車の影もない。少し怖くなってきて耳を澄ましてみて、さらにゾッとした。……まったくの無音状態だったので。

盛夏だというのに、虫の声すらしないなんてことがあるだろうか?あらためて辺りを見回すと周囲の建物の明かりがすべて消えていて、人気がまるで感じられなかった。

北さんは大急ぎでトラックに乗り込んでエンジンを掛けた。白山通りの交差点に差しかかるまでの数分間は、街の明かりも車も人も消えた真っ暗な中を走ったが、交差点を左折した途端、車や明かりが戻って、いつもの景色になった。

あのとき自分は、人をはねた瞬間に、別の世界にトラックごと飛ばされたのではないか、と今では北さんは思っている。

「そもそも僕がはねたのは人だったんでしょうか?髪型も服装も思い出せないんですよ。白っぽい人型の塊だったことだけは確かなんですけどね」

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