労働者の霊と大雪ホテルの怪(北海道河東郡上士幌町糠平) | コワイハナシ47

労働者の霊と大雪ホテルの怪(北海道河東郡上士幌町糠平)

添乗員をしていた秋野さんが遭遇した霊は数多い。

2003年にオーナーの破産によって、糠平の大雪ホテルは廃墟と化した。

現在は取り壊されたという。

糠平温泉街は、今もこじんまりとした風情豊かな場所。スキーの利用客が多く、気づかない人は多いが、この辺り一帯が心霊スポットだと秋野さんは語る。

どうして霊が出るのかは、開拓時代から戦争中までの強制労働や囚人労働の結果、死んだ人間を弔いもせず、人柱にしたり埋めたりしたからだという。

特に近くにあるトンネルでは必ず何か霊体験をする同僚が多かった。また、ホテルによっては出る部屋は添乗員同士でチェックしていた。

大雪ホテルで起きたことから秋野さんは話す。

もう20年くらい前だろうか。バブルの後だったが学生のスキー旅行に添乗していた時だった。ホテル何軒かに停まる団体で、大雪ホテルが彼女の担当だった。

ホテルの近くの駐車場にバスをを停める。

夜になり、携帯電話を車内に忘れてしまったことに気付く。仕事上どうしても必要なので取りに行こうとしたときだった。

バスに人が乘っているのが見えた。運転手さんが戻ってきたんだろうか。

そのとき思い出した言葉があった。

「日が暮れてからバスに戻るな」

何かのメモに書いてあったのだ。糠平だけのマニュアルがあった。

日が暮れてからの外には色んな霊に遭うからという。

とはいえ、誰かが乗ってるし大丈夫だろうと思って、バスの扉を押す。開いていた。見ると運転手が運転席で寝ていた。

「風邪ひきますよ」

揺り起こすが起きない。このままじゃ凍死してしまう。激しく運転手を揺り起こす。でもふと気づく。

さっき見た人影は、確か後ろの方に座ってたなと。

見渡すが、誰もいない。

その時、窓の外から中を覗く顔が見えた。2、3人。雪焼けなのか、真っ黒に近い顔色の男性。

「ひっ」

ぞっとして声が漏れた。何かを叫んでいるようにも見えたが、背筋が凍り付いたまま。とにかく運転手を起こさなくては。

やっと起きた運転手を連れて、携帯電話を握り締め、バスにカギをした。

考えたら、バスの窓を覗ける背の高さの人間なら2m以上ないと難しい。

外にいたのは誰!

でもそんな事考えないようにしよう! と黙々を雪道を歩いた。

ザッザッと歩く音が聞こえる。後ろを誰かがついてくる。

振り向かないよう秋野さんは急いでホテルの中に入った。

我に返った様子の運転手に聞いた。彼は明日の予定表を取りにバスに行ったが、中に入ったとたん気を失ったそうだ。

で、目を覚ますとトンネルの中を彷徨っていて、何人もつるはしやスコップを持った真っ黒の男たちが出て来る。

しかも運転手の体をすり抜けていく。

すり抜ける度に、自分の命が削られていくような衝動にかられた。

戻らなくては、戻らなくては。

その時肩にぶつかった人間がいた。痛くて痛くて頭に来た。

「オイ! 何だよ!」

振り向いた男の顔は秋野さんの顔。

そして目を覚ますと、秋野さんが肩をゆすっていた。

周りを通り過ぎていった男たちが、窓の外から見ているのが見えた、という。

状況は違うが、二人共同じ「窓から覗く男たち」を見たのだった。

「日が暮れてからバスに戻るな」

もしかしたら、夜な夜な魂を取りにやってきているのかもしれない。

運転手もあのまま寝ていたら、凍死しただろうから。

取り壊される前の大雪ホテル。オーナーが逃げたため、布団も何もかも当時の宿泊施設のままだった。その窓のどこかに、誰かが立っているようにも感じる。

異様に荒れた室内は、邪悪な霊の住み家にもなっていたのだろう。

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