網走刑務所 囚人墓地(北海道網走市) | コワイハナシ47

網走刑務所 囚人墓地(北海道網走市)

網走刑務所は明治時代にできた、極寒、最北の刑務所。

特に昭和に入る頃は軍の統制が厳しく、政治犯の流刑の地とされていた。

拷問が横行した時代、この牢獄には血塗られた歴史がある。

高校3年の時、車の免許を取ったばかりの友達と3人で肝試しに行った。

慣れてないのもあって、ナビ通りに進んでも着かない状況だった。

車の窓にベタベタと手がついていたとか、囚人の霊に取り囲まれたとか、先輩たちから怖い話ばかり聞いていたから、車を止めたらさっさと出ようという話になった。少しでも車の中で待機していたら、囚人の霊に覗かれそうで余計怖く感じた。

真っ暗の中、懐中電灯だけを頼りに歩く。

進んでいくと、何だか変な音が聞こえる。

石の上を叩くような音、「コーン コーン」と響いている。

それはだんだん自分たちに近付いてくる感じだった。

しかも「コン コン」と音のピッチが上がってきている。

その音が聞こえていないのか、二人の友達はずんずん進んでいく。僕はどうも気が重くなっていた。この音が間近まで来たら憑りつかれる……そんな気分だった。だからといって一人で車に逃げ込む勇気もない。

その時、懐中電灯の電池が切れたのか、パっと明かりが消えた。

「やべ!」

「戻るか!」

僕はラッキーと思って逃げた。

音がどんどん自分の前まで近づいていたからだ。

無我夢中で走って墓地の入口に着くと、友達が一人いない。

電灯を操作しているうちにやっと明かりがついて、またさっき逃げた場所に戻ることにした。友達もどこかでこけて倒れているのかもしれない。

戻ると、墓の前で倒れている友達がいた。

「オイ大丈夫か、もう行くぞ!」

「息してるか? 倒れたのかお前……」

友達はぐったりしていた。痩せて軽かったので、二人で腕と足を持って走って車まで戻った。その時もすごく後ろの髪を引っ張られるような感覚があった。

もうひとりの友達も、

「オイ、誰か俺を引っ張ってる感じ、見てくれ」

「見ねえよ! そんなの気のせいだ!」

とにかく逃げなきゃヤバい。

怒鳴り合いながら車までたどり着く。

ドアを開けて、倒れた友達を押し込もうとした時だった。

「わしをどこに連れて行く気だ!」

友人がくわっと目を見開いて、鬼のような形相で睨み付けた。

低い地鳴りのような、機械音のような、とにかく友達の声と全然違う声。

「やべえよこいつ、とりつかれたんじゃねえよな」

運転席に座った友達がエンジンをかけた。

かからない。

何度もキーを回すが、空回りするような音しかしない。

僕と友達は焦ってたが、古い車だから大丈夫だ、霊とかじゃないと心に言い聞かせながら無言でエンジンを掛け続けた。

外が寒いので、窓が曇りはじめていた。車内の熱気が上がっていたのもある。

その時だった。

「コン コン コン!」

窓を石で叩くような音が聞こえた。本当に誰かに石で窓を破られそうな勢いだった。後部シートの窓から聞こえた。

ぞっとしながら振り向くと、後部シートの窓に誰かが立っている。

行くときも帰りも誰にも会わなかったし、絶対これは霊だ! と僕は確信していた。開けたらダメだ、殺される!

その時、後部シートは手動で開くようになっていたので、倒れた友達が窓を開けてしまった。

窓の外を見ると!

黒い人影みたいなものが見えた。顔の中身はみえない黒い影だった。

だけど確かにそこに立っている。

「やめろ! 閉めろ!」

僕は叫んだ。友人がやっと我に返り、慌てて窓を閉めた。

すると、やっとエンジンがかかり、車を急発進させてそこを脱出することができた。もう二度とここには来ない。

後から倒れた友達に何があったかを聞くと、懐中電灯が消えてからは全く覚えていないそうだ。ただ、ずっと頭の中で「コン コン」という音が響いていたという。

運転していた友人は

「黙ってたけどさ、急発進したとき、オレンジ色の服着たおじいさんみたいなのが道の先でにらんでこっち見てんのが見えたんだ」

「それって……」

「幽霊だろうな……」

しばらく何も話さずに家路についた。僕の家まで送ってもらい、車から降りた時、さっき「コンコン」と叩かれた後部ドアを何となく見たら、べっこりとへこんでいた。

家に帰った友人がこっぴどく叱られたそうだが、どこにもぶつけなかったし、駐車してたときもそんなへこみはなかった。

思い当たるのは、あの時の黒い人影しかない。

憑りつかれかけた友達はその日から1週間高熱にうなされたという。

僕はそれから怪談話や心霊の噂のある場所に行くたびに、「コン コン」という音が聞こえるようになった。

あれは、霊が歩いて近寄ってきている音なんだと今は思う。

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