平和の滝に誘い込む霊(北海道札幌市西区 平和) | コワイハナシ47

平和の滝に誘い込む霊(北海道札幌市西区 平和)

平和の滝という名前は、この地域の「平和」からきている。ここが明治初期、相当苦労して開墾したことから、希望を胸にこの名前を付けたという。

だが、名前と裏腹に自殺の名所として名高い。

地元の人は夜は絶対に近付かないスポット。公衆トイレで焼身自殺があったり、滝つぼに飛び込んだリ、首つり自殺があったり。

北海道出身のとある女性からこの滝の話を聞いた。

美紀さん(仮名)は小学生の頃、友達とそのお父さんとクワガタやカブトムシを取りにここへ来た。

木を揺らすと、ボタボタと落ちて来るから! と友達のお父さんが木を蹴っては捕まえてくれる。

でも、昆虫採集自体は男の子じゃないしそんなに楽しくはなかった。

気が付くと、滝の上に当たる森の中にいた。

滝を眺めてみようかなと、衝動的に歩き出した美紀さん。

ふと木々を見上げると、色んな紐や服が引っかかっていた。足元を見ると、靴や衣服、埋もれてわからないような黒いコートや子供の服が落ちている。

一番ショックだったのは、おんぶ紐が木から吊るされていたこと。

赤ちゃんとお母さんがここで身投げしたんだろうか……。

子供ながらに悲しい気持ちになった。

自殺の名所と聞いていたから、余計、最後の荷物置き場になったんだ……と優しい美紀さんは感じていた。

その時、ふうっと押されるような感覚があった。そのまま押されるように滝の真上まで歩き進めてしまう。見下ろすと真下に滝つぼが見える。

このまま落ちたらどうなるんだろう。

怖いというよりも、むしろ落ちてみたい感覚になった。

滝が流れる様と流れる音に身をゆだねたくなる不思議な感覚。

「一緒に行きましょ。飛び込むのよ」

耳元でささやく女性の声がした。うん、とうなづく美紀さん。

もうひと押しで、美紀さんは落ちる、というときだった。

「おんぎゃあーおんぎゃあー」

突然赤ちゃんのけたたましい泣き声が響いた。

その瞬間、美紀さんは我に返り、ギリギリのところで後ろに尻もちをついた。

耳元で「チッ」と舌打ちが聞こえ、初めて背筋が凍った。

「美紀ちゃーん!」

友達のお父さんが大きな声で探している声が聞こえた。美紀さんは尻もちをついたまま立てずに、滝から後ろの方へと必死で転がった。服が泥だらけになってもいいから、ここから離れなければ。

転がってきた美紀さんをみて、みんなは驚いていた。

後で、赤ちゃんの声がしたことをたずねたら、誰も聞いてないと答えた。

この滝で自殺や無理心中した人達もきっと一瞬の気の迷いで飛び込んだような気がする。だから簡単な気持ちで行くところじゃないと、美紀さんはいう。

背を押された手の感覚や、赤ちゃんの声がまだ耳に残っているという。

赤ちゃんの泣き声のヘルツは救急車のサイレンと同じで、それは耳障りにできている。

耳障りな分、我に返ることができる大事な音だったりする。

助けてくれたのは、あのおんぶ紐に抱っこされていた心中で亡くなった赤ちゃんかもしれない。

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