函館四稜郭の怪(北海道函館市) | コワイハナシ47

函館四稜郭の怪(北海道函館市)

函館市のシンボル、五稜郭。

もうひとつ、四稜郭がある。函館戦争での最期に旧幕府軍が、市民に三日で要塞を造らせた。兵卒や住民300人を擁して造った。

ちょうど五稜郭を山側から見張ることができる位置にある。

4角形に造られているが、土塁のような野城跡だ。

上空から見るとミステリーサークルのように見えるが、旧幕府軍についていたフランス軍人が指導して、急ピッチで造られた場所。

もう25年くらい前になるだろうか。

函館出身の由紀さんが、結婚の報告に当時の彼と実家に戻った。

夜中、函館で初めて彼とドライブしていたときだった。何となく山の方へ向かっていたのか、運転しない由紀さんは彼に任せきりだった。

由紀さんもほとんど行かない方角だったからどこを走ってるのか見当がつかない。どうやら迷ったらしい。深夜で、辺りがよく見えない場所。

「由紀、ちょっとトイレ行きたいんだけど」

「この辺、コンビニとかありそうにないよ。そこらへんでやれない?」

「いいけど、怖いな。あの辺り広くなってるとこ行ってくるよ」

車を停めて、そそくさと彼は外に出た。

エンジンを切ってしまったら、妙に寒くなってきた。

何となく、フロントといいバックといい、中を覗き込まれているような不思議な感覚がした。小刻みに足が震える。

「コンコン」

窓ガラスを叩く音がした。びくっとして、とても外を見れない。警官でも見回りに来たのか、それでも彼が戻るまで開けないし、見たくない。

「コンコンコン!」

叩く音が強くなった。いや、怖い! 震えて頭を抱える。でも待てよ、もしかしたら彼が鍵を落として、開けてくれっていってるのかも……。

音がした助手席の窓をそっと見た。

誰もいない。

あれ? と思って前を見た。

フロントガラスの前に10人いや20人ほどの、着物や軍服を着た男が目を見開いて中を覗いている! 銃を構えている人、泥か血かわからない汚れた顔!

「イヤー!」

由紀さんは頭を抱えて目を閉じ、手で耳をおさえた。

「ガチャリ」

後部のドアがいきなり開いた。

もうだめだ、殺される! 由紀さんは恐ろしすぎて声が出ない。

「どうした、由紀。気分が悪いのか?」

彼だった。

「もう! 何で後ろのドア開けんのよ! びっくりするじゃない!」

「だって、お前が後ろに座ってるように見えたからさ」

「私ずっと助手席にいたわよ!」

「確かに後ろに座ってるように見えたんだけどな」

その言葉で鳥肌が立った。今、私の後ろの席に誰かいるってこと……?

やっと実家に戻り、母親にその話をすると、急いで台所から塩の壺を持って出てきた。由紀さんと彼と車の中まで塩を巻き散らした。

「四稜郭だったんじゃないか? あそこは函館戦争の時、たくさん兵隊が死んだから、夜に行ったらいかんのよ」

「あ、そこです。立て札見ました」

「いかんいかん。塩風呂入れるから、すぐ入んなさい」

そこは子供の頃、祖父母から行ってはいけないといわれていた場所だった。

昔の五稜郭の戦いの時、たくさんの人が死んだといわれる。

よりによってその場所だと気づいたのは後からだった。

車のフロントガラスにいくつもの手形がついていたのと、後部シートには内側から手形があった……。中に入ってきたんだ。由紀さんはぞっとした。

彼とは結局、その後破局した。

優しい彼だったのに。

あの夜以来、由紀さんは色んな霊を見るようになってしまった。

そして、彼の肩にいくつもの女の霊が憑いてるのまで見えてしまったから。

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