死のレース つくばサーキット・2(茨城県下妻市村岡) | コワイハナシ47

死のレース つくばサーキット・2(茨城県下妻市村岡)

これは20年近く前の話だ。

当時、高校生だったKさんが参戦していたバイクレースは「関東選手権」だった。

これは、タイトルがかかった筑波の最終戦での出来事である。

レース当日、Kさんは朝から体調が悪かった。

悪いものでも食べたんだろうか? 特に思い当たらない。急に悪寒がして熱が上がったようだった。ウイルス性の風邪かと思い風邪薬だけ飲んだ。

しかし、一向に体調は良くならない。むしろ悪化の一途だった。

頭痛と吐き気で体全体がだるくて出場できる状態ではなかったが、タイトルがかかっている上、スポンサーにも悪いので、無理をおして出場した。

レースが始まるとアドレナリンが出る。Kさんは悪体調にも関わらず、スタートからトップを走りつづけていた。

残り5周を切ったところ、2位の選手に抜かれた。

しかし、ストレートに入りピットのボードを見ると、『ポジション1 DOWN』の文字になっていた。

「何だよ、間違いだろ? ダウン? 速度落とせって? 今、抜かれたの見てないのかよ?」

Kさんは独り言をつぶやいた。

明らかに間違いの表示と決めつけ、頭の中は抜かれた車を追いかけるのみだった。

抜きつ抜かれつの争いの中で、最終ラップを迎えて最終コーナーまでトップを走っていた。

だが、最後の最後で後続の車に仕掛けられて抜かれそうになる。

「ここで負けてたまるかよ!」

Kさんは限界までブレーキングを遅らせコーナーに進入した。

だがそこで曲がりきれなかった。

そのままタイヤバリアに衝突、転倒してしまったのだ。意識不明になり救急車で運ばれた。バイクは完全に壊れてしまった。

一体、Kさんに何が起こったのだろうか。

Kさんの意識が戻ったのは、救急病院のベッドの上だった。

「あれ、気づいたか?」

「……、うん。俺、どうしたんだ……?」

チームスタッフが慌てて医師を呼びにいった。

意識が戻ると、この事故の顛末をスタッフが語り始めた。

「お前、何度もサインボードで出したのに何で警告を無視したんだよ?」

「警告って? あの間違った表示だろ? おかげで気を取られて俺は失敗したんだよ!」

「1位を走っていただろ? 独走状態なんだから、ペースを下げろって指示出したよな? なんで逆にペース上げてんだ。だからこうなるんだろ! 何考えてんだ」

「えっ、そんなことないよ、後続の車がずっとついてただろ?」

「だから、ほとんど1周遅れくらいになってて、Kが1人勝ちしてたって言ってるだろ。力を抜いても勝てるのに、だからDOWN、ペース下げろってボード出したんだよ。なのにサイドバイサイドみたいに走りやがって。全開走行とか、あの状態でいらねえだろ」

「確かに後ろから2位の車が追ってたんだよ。なのにダウンしろって指示だったから、何言ってんだ? 今手を抜いたらまずい、抜かれるだろ! って思ったんだよ」

「……どういうことだ?」

「後ろにぴったり車がついてただろ? 抜きつ抜かれつの」

「……いないよ。自分の目で確かめるか?」

スタッフから録画した自分の走りを見せられた。確かに後続車なんて近くにいない。

Kさんは驚いた。

あの抜きつ抜かれつのレースの攻防は何だったのか?

サーキットに住む怨霊か、レースに出場していた選手の生き霊か、白昼に幻をみたことになる。

退院後、お寺に車と本人の除霊と供養をしてもらいに行った。

住職の話では、その土地の自縛霊ではなく浮幽霊の仕業で、その浮幽霊はレースの関係者だそうだ。レースを混乱させるために、Kさんに憑依して幻覚を見せていたのだという。

Kさんはその後も、浮幽霊のせいでリハビリと長期欠場を余儀なくされた。

同じようにクラッシュしていく選手の話を聞くたび、それを思い出すそうだ。

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観覧者 つくばサーキット・3(茨城県下妻市村岡)

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