紋白蝶になった義母(東京都北区) | コワイハナシ47

紋白蝶になった義母(東京都北区)

民俗学の世界には、蝶は死者の化身であるとする説があり、祖先の霊魂が蝶に姿を変えて子孫のもとを訪れるとする伝承が各地に残る。

東京都北区出身の女性、志田さんは、二〇年前に亡くなった義母(お姑しゅうとめさん)が紋白蝶に化身したと信じている。

二〇年前、志田さんの義母は重い病気に罹かかって入院し、手術を受けることになった。

志田さんは手術の成功を祈って、自宅のカレンダーにお守りをセロテープで貼りつけた。しかし、手術を目前に控えたある日、誰も触りもしないのに、そのお守りがポーンと二メートルも宙を飛んで床に落ちた。

志田さんは、これを病院に入院中の義母からの「もうお守りは必要なくなったよ」というメッセージだろうと解釈した。間もなく、義母が亡くなったという知らせが入ったので、その確信を深めた。

志田さんは悲しみに暮れた。

義母と彼女は、仲が良いなどという言葉では語り切れない、深い情で結ばれていたのだ。義母は尊敬する人生の先輩であり、かけがえのない親友であった。

初七日を迎え、法事のために志田さんが出掛けようとすると、玄関の前に一頭の紋白蝶が死んで横たわっていた。

「まさかこの蝶は義母の化身では、と、閃いたのです」

志田さんは紋白蝶の死骸を庭に埋葬し、丁重に弔った。

その日を境にして、何かにつけて頻繁に、志田さんの前を紋白蝶が楽しげに舞うようになった。

あるときはバスに乗車して窓側の席に座ったところ、志田さんの真横の窓のすぐ近くを紋白蝶が飛び、バスが走りだしても離れていかなかった。外出しようとして玄関を開けると、待っていたかのように目の前で飛び回っていたことも一度や二度ではない。

成虫がいないはずの寒い季節にも、紋白蝶は志田さんのもとをひらひらと訪れる。

「義母が私を励ましてくれているんですよ、きっと。紋白蝶を見るたびに、また挨拶しに来てくれたんだと思って嬉しくて」

紋白蝶の来訪は今でも続いているそうだ。

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