明治座の「君が代」(浜松スタジオシリーズ)(東京都中央区) | コワイハナシ47

明治座の「君が代」(浜松スタジオシリーズ)(東京都中央区)

前項のこぼれ話をひとつ。

浜町に現存する「明治座」を訪れた際、どこからともなく「君が代」が聞こえてきたら、気のせいではなく、件の大空襲で亡くなった人々の声かもしれない。

一九四五年(昭和二〇)三月一〇日の東京大空襲の際に、明治座の前にあった防空壕に避難して助かった人の証言が残っている。それによると、燃え盛る明治座の屋上から「君が代」の大合唱が聞こえていたのだという。

「はっきりと、今も耳に残っています。荘厳な大合唱という感じでした」(『東京大空襲・戦災誌第一巻』より)

一階から二階へ、さらに上の階へと火に追われ、ついに屋上に追いつめられた人々の最期の合唱。籠められた思いは如何なるものだったか……。

親子が引き裂かれ、あるいは共に拷問に等しい苦痛の果てに残酷な死を迎えるとき、彼らの胸にあったのは、お国への忠誠心だけではなかったはずだ。

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