自殺サイトとスナッフフィルム(茨城県某市林中) | コワイハナシ47

自殺サイトとスナッフフィルム(茨城県某市林中)

曾田さんは、彼の車の中で震えながら語ってくれた。

「前に見た人たちがあれに関与してたんだと思うんです。見てしまったんですよ、私は」

やや支離滅裂な様子で話された。私がバラバラ殺人に関しての取材に行った時のことだ。

都内のバス会社に勤める曾田さんは、時折北関東方面までの臨時バスを運行することがあった。その日は茨城県内にあるゴルフ場の送迎バスだった。

前泊をする予定なのか、ゴルフでないパーティをするのか、ゴルフ場に到着する時間が夜の20時だったのは記憶している。普段は朝に送り、夕方バスをまわすことになっていたので、少し事情が違うのかなと思っていた。

ここから先は臨場感を感じていただくため、曾田さんの話をそのまま引用する。

30人くらいですかね、都内の待ち合わせ場所に集合されていたんですよ。

で、バスがかなりの大型だったんで、

「これで全員ですか?」

って聞いたら、「全員だ」って答えるんでね、それで発車したわけですよ。

みんな暗いっていうか、目が合わないっていうかね、うつろな感じ。全然レジャーに行こうって雰囲気じゃない。お葬式の団体かなってくらい異様な雰囲気だったんですよ。

ほら、ゴルフで宿泊なんて楽しいし、普通はワイワイしてるもんだなと思うんだけど、ゴルフバッグも持ってないしね。まあ、その頃も宅急便はあったからね。

でね、この運転したバスっていうのが元々いわくつきでね、前にバスで心臓まひで亡くなったお客さんがいたわけですよ。だから、バスの運転席の表示の裏にはお札がびっしり貼ってあるんですよね。要は元々事故車両だったわけです。

出るかって? そりゃ出ますよ。だけど、いまはその話をしてる場合じゃないんで先に進みますね。

荷物も変なんですよ。クーラーボックスとか、スーツケースみたいなものもあったかな。釣りでもするのかね、と思ってたんですけど、これがなかなか重くてね。

茨城の県境を越えたくらいですかね、はい、常磐道でしたね。その頃からザワザワしはじめたんですよ。座席を立ったり座ったりするのは見えたんでね。

「あと30分程度で到着します」

ってアナウンスすると、やけに静まり返りましたね。

で、そのゴルフ場に着いて降ろしたんですが、そこは林の中にある感じで、まあ有名どころですよね、名前は言えませんけども。

で、降りられた方の内の3人くらいが大きな袋を抱えてきたんですよ。乗る時はわかんなかったんですけどね、黒いビニールシートに包まれた、そうね、銅像みたいな感じかな。人の背丈くらいある包みを持って降りようとしたんですよ。当然手伝おうと思って、

「手伝いますよ」

って言ったら、

「邪魔だ、どけ」

って睨まれてね。そりゃあ、感じの悪い言い方でね。あんまりいい関係者じゃないな、言い方も顔つきもドスが効いてるっていうかね。あっち関係の人かな? って思って、こっちも江戸っ子だからね。頭に来ちゃうけど、そんならそれでいいやって割り切って、運転席にもどって都内に戻る準備してたんですよ。

そのときね、すうーっと誰かが開いたドアから入って後ろの座席に座ったんですよ。女の人だって即座に感じましたね。客の中に女性もいたんですけどね、もういいお年の人ばかりだったかな。それとは違うスラッとした、若い女性の雰囲気ですよ。

帰りのバスは別の担当者が行くだけだから、私はもう帰るだけ。で、誰か乗ってきたなと思って、振り返ってもミラーで見ても誰もいないんですよ。

バスってのは11個ミラーがついてますからね、モニターもあるから全方向で何があるかわかるんですよ。車輪の近くに小さいお子さんなんかいてもわかるようにね。

そしたら、バスの後ろに数人の女性が立ってるんですよ。乗りたそうにしてるのか見送ってるのかわからないんですけど、まあ、普通は乗せちゃいけませんけどね。

何か物寂しそうというか、連れて行ってくれって雰囲気なんですよ。

それで「ファーン」ってクラクション鳴らしてみたんです。

そしたら、そこに立ってたはずの人がシューっといなくなりましてね。影みたいに消えたんですよ。私もさすがにゾッとしましたね。

そのゴルフ場には黒塗りの車が何台も置いてあってね。オーナーさんたちなのかなあ。ドアが開いて何人かが入っていくのを見ましたよ。どう見てもあっち関係でしょうね。

で、バスを出してしばらくした時ですよ。ミラーを見ると、誰もいないと思ってた車内に一人座ってるんです。黒髪の長さは肩くらいまでの女の人だなあ。

「ああ、変なの連れてきちゃったな」

何せ、事故車両ですからね。で、そのまま走って高速のインターで休憩したんですよ。

そしたら知り合いのバスの運転手もそこにいてね。タバコ吸いながら話してたんですよ。

「そのゴルフ場、俺も行った事あるなあ」

って。送迎したことあったらしいんですよね。同じように夜更けに送ったらしいんですけど、みんな一言も口をきかないし、暗い表情で入って行ったって。おんなじなんですよ。

それで言うんですよ。

「お前、戻るまでに誰か乗せなかった?」

って。私も気になってたから、さっきの女性の話をしたんです。そしたら

「俺も乗せたんだよ。で、それから嫌な夢っていうか変なのばっかり見てな。気を付けろよ」

っていうもんですから、お清めに食堂にあった塩を体に振りましたよ。

で、バスに戻ったら、こんどはくっきりその女性が座ってるのが見えるんです。こういうの話しかけたらダメだと思って、見えないふりしてたんです。

けどね、気づいたんです。その人、少しずつ運転席に近づいて座ってるんですよ……。

川口ジャンクションから都内に入った時ですかね、気配を感じたんで、ちらっと左を見たんです。そしたらそこに居ましたよ。真後ろの左側の席。

もう頭の中はパニックですよ。でも高速だから路肩に止めるわけにはいかないですからね、首都高に入って車の台数が増えて、渋滞しはじめてからですかね。完全に止まったんですよ。

で、もう一回振り向いたんですよ。

そしたらその女の人、顔の半分が焼けただれたようになってて血だらけなんですよ。色が白いと思ってたら、何か粉みたいのをふりかけられていたんです。チョークの粉みたいなの。石灰かな。それと血が混じってどす黒くなっててね。引きずられた死体なんかがこんな感じだったかな。仕事柄、よく道で事故現場見かけましたからね。

一瞬だけど、これは道路で亡くなった人の霊かなと思ったわけです。損傷がひどいんでね。

よく見れたなって思うでしょう。私だって見たくないけど、目が離れなくなったんですよ。本当に恐怖の状態だと目が釘付けになってしまうんですね。

その人はもちろん何もいいませんよ。だけど、頭の中に響くんですね、脳のてっぺんから聞こえてくる声ってあるでしょ。お告げみたいな。耳からじゃなくて脳に直接来るあれ。ああ、ないですか。まあ普通はそうですよね。それが、

「お母さん、助けて」

って聞こえたんですよ。私をお母さんと思ったんでしょうかね。もちろん私はどうみてもただのオジサンですけどね。それを無視してりゃよかったんですが、

「もう成仏してください」

って言っちゃったんですよ。それからはお経を唱えまくりでね。幽霊でしょ。どう考えても。で、そのまま車庫に付いたんで、その人が乗っていようがいまいが、見ないようにして出たんですよ。記憶がないってくらい、見るのを遮断してましたね。そりゃ怖いですから。

それでね、この話は続きがあるんです。

このバスを運転した人が、次々体調を崩してしまうんですよ。車ごとお祓いしても変わらないんです。霊媒師まで来て見てくれたけど、自分の力じゃ無理って逃げる始末でね。

もちろん事故車両だからっていう言い訳はあるけども、私もここで幽霊見たなんて言いたくなかったしね。

それでね、前にサービスエリアであった友達からも連絡がきたんですよ。プライベートであのゴルフ場に行かないか誘われてね、肝試しみたいなことですよ。私は夜中に行くのはあまり好きじゃないから断ったんです。

そしたら、変なビデオテープを渡されてね。

『スナッフフィルム』っていうらしいんです。これを見ろって言うんですよ。で、再生してみたら、広い場所に何人もすっ裸で、縄で縛られた人たちがいるんです。でも薬でも打たれたのか、手足は動かなくて、顔だけ動くんですよ。それから手足をもいでいく……。

これ以上いいたくないですね。死に至るまでを映してるんですよ。しかも何人も殺すんです。

あんまり気持ち悪いもんだから、途中で吐きましたし、見るのやめました。

「これ、どこで手に入れたんだよ。このやられた人たちは特殊加工でやってんのかい?」

て聞くと、

「これは自殺志願者たちを募ってやってるんだ」

なんて友人が言うもんですから。私もあの時のお客さんたちの表情とか、連れてった主催者たち、それに追いかけてきた幽霊みたいなのも合点がいくわけです。

「これをあそこでやってたって言うのかい?」

「そう思う。その中で殺されてた人がな、俺が運転してた時に見たことがあるんだよ」

「警察に言った方がいいんじゃないかい?」

「言ったってしょうがねえよ。俺にまとわりついてきた幽霊の話すんのかよ」

なんで友人は1人でその現場を見に行くって言って、それっきり。行方不明なんですよ。捜索願ついでに警察にもこのビデオ持って説明に行ったんです。

そしたら、証拠不十分だって。冗談じゃないですよね、ゴルフ場の場所まで言ってるのに、事件性がないだのなんだの。ああいう連中は死体が出てからしか動けないんですよ。死体はどうしてるのか、林に埋めてるのか、クーラーボックスとかに入れるのか、死体もバラバラにして次の使い道探すわけでしょう。変態もいますからね。人骨取引したりだとか。

自殺サイトの連中がまんまとこういうフィルムの餌食にされてんだと思いましたよ。

でね、次の日くらいかな、行方不明の友人を見たという男から連絡があってね。びっくりですよ。警察に言った以外は誰にも話していませんからね。こっちも警察から派遣されてきた目撃者かと思ったわけです。他に情報流してませんからね。で、スナッフフィルムのことも知っていて、それを渡してほしいというわけです。怪しいなと思ったけど、私も興味があったもんだから、向こうの指定した場所で会ったんです。ワンボックスカーでね。助手席で少し話して別れました。それ以降連絡はないけど、どうやらその男が友人を拉致して殺したんじゃないかなって思ったわけです。そんなの目つきみりゃわかりますよ。

それでフィルム渡した後、怖くなってバス会社はやめました。その会社も深夜の長距離バスで大きな事故やって倒産しましたよ。テレビでもニュースになったかな。

あのバスには霊魂が染みついてたんでしょうね。事故起こしたのは例のバスでしたよ。

あ、私は今は別の会社で路線バスの運転手やってますよ。長距離はもう嫌ですねえ。

と、曾田さんは一気に話した。額からは大量の汗が出ていた。私は尋ねた。

「それで、私にどうしろとおっしゃるんですか?」

曾田さんは煙草をふかすと、据わった眼差しで私を見て言った。

「それから癖になりましてね、殺人フィルムが」

ガチャリ、と車の中にロックをする音が響いた。

「最後に切断されるとき、命が切れるときですねえ。必ず言うんですって」

「……何を言うんですか?」

「『お母さん、助けて』ってね。自殺志願者も金で魂売る人間も最後はそれ言うんです」

そしてゆっくりと私の身体に手を伸ばしてきた。

「何で、簡単に人の車に乗るかなあ。のこのこ女1人で来てさ。知ってます? バスって内側からは運転手しか開けられないんですよね。あと、1つだけ嘘をついていました」

私は全身に震えを感じた。曾田さんの右手には注射器が見えた。

「私、曾田じゃありません。スナッフフィルムを受け取った電話の男ですよ」

彼は、今まで見たこともないような邪悪な表情で、ニタリと笑った。

今まで? 今日会ったばかりの人だったのに。私の意識が遠のいていった。

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