山びこと少年(茨城県つくば市玉取町) | コワイハナシ47

山びこと少年(茨城県つくば市玉取町)

古くから語り継がれる言い伝えの中には、実在の出来事を表していることも多い。歴史を象徴する神話は奥が深い。

この玉取という町は、古くから天皇家と深いかかわりがあると言われている。「玉」が付く地名はそのような流れを汲んでいると言われている。

遠い昔、『三本足のカラス』がくちばしに玉を取り、穴に落とした。

この三本足のカラスは神武天皇の象徴と言われる。

つまり、「この辺り一帯に住んでいた土着の民族(エビス、ツチグモ)を制圧し、大和朝廷が支配下に置いた場所」という意味である。

玉蔵院というお寺もある。

そして玉の埋められた場所を『玉塚』と呼んだ。

その後、玉塚は大切に保管されたが、ある時ここを掘り起こそう、天皇家の宝があるかもしれんといって様々な人間がやって来た。

だが、掘り起こす者はみな揃って不吉な死に方をした。

日々体が朽ち果てやせ衰えて死ぬ者。それも数か月で死に至る。

もしくは、金の取り合いでの喧嘩や突き落とされての事故など、ろくなことにならない。次第にここは妙な噂が立つようになった。

『玉塚を掘った者は死ぬ』と。

昭和に入り、ある大学教授が、そんなでたらめはあるか、科学的証拠もない話に乗れるかと、またそこを掘り返した。

だが相当掘っても、玉も宝も見つかりはしない。

どこまでも調査と称して掘り下げることにした。

すると、教授はどんどん疲れやすくなり、ある時ぶっ倒れてしまった。

彼は重い病気にかかった。やはり、皆がそう思った。「掘ったら死ぬ」と。

それは、ここを掘り起こした者達がかかる病状と全く同じだったのだ。

現代での病名は「白血病」。

相当な放射性物質があるのか、それもまだ定かではない。玉は何かの化学物質だったのだろうか。とすら思うが、もう掘り起こす者はいないだろう。

そんな由縁のある土地での話。この話は玉取町でなく、茨城にある、『玉』が付く別の場所の話だ。

少年の名はA。ここには祖父の家があった。夏休みになり、山梨から遊びにきていたA君は1人でおじいさんの家に泊まる事になった。

しかし、泊まった日の夜。おかしなことに気が付いた。

夜中に大きな山びこが聞こえるのだ。

声というよりも地鳴りのように、「ウオオオオオ」と音が渦を巻くようだった。

それが聞こえるとおじいさんは言った。

「家じゅうの鍵をしめろ!」

鍵を閉めたあと、山びこが消えると、お礼にお水やごはんを神棚に上げる。

そしてしめ縄をするのが決まりだった。

A君は全く意味がわからなかったが、それをしないと、この家に何かがやってくるような気がして、そのたびに同じ儀式をした。

おじいさんに頼まれて、近くに住む遠い親戚の家にも行くことがあった。

「Aちゃん。おばさん、ちょっと用事あるでよ、夕方までお留守番しててくれないか?」

「うん、わかった」

「もし誰かが来ても、『家の者は誰もいません』って言って開けたらダメだよ」

「誰が来ても? どうして?」

「おばさんの家はね、お金持ちだと思って、色んな人がお恵みくださいって来るのよ。追い払うのも悪いから、出ないようにしているんだよ」

おばさんは優しく笑った。笑うたびに前歯の金歯がキラリと光り、なんだかそれが余計お金持ちぶりを強調していた。

その家は古い農家の造りだが立派な家で、入口は屋根付きの門塀があり、横に小さな木戸があった。

聞くと江戸時代から残っている由緒正しいお家なんだそうだ。

普段マンションに暮らしているA君には、まるで民俗博物館にでも来たような感覚で、家中を探検していた。

しばらくすると

「トントントントン」

と音がする。もちろん、黙って答えず門を開けずにいた。

どうやら外の門をたたいているようだった。だんだんと音が大きくなり、

「ドンドンドンドン」

強さが増してきた。怖くなって、門の近くに行き、木戸をこっそり開けた。

「家の者はおりません。僕は留守番してるだけです」

すると、ガリガリに痩せて目が飛び出た少年がそこに立っていた。

身長は100センチもないだろうか、とにかく目だけがぎょろぎょろしていた。

「□×△%$#ギギギギギギ」

意味不明な言葉と「ギギギギ」という言葉を何度も言う。

A君はその子と目が合ったまま、意識がなくなってしまった。

目を覚ました時は、おじいさんの家に寝かされていた。倒れたのを見つけた近所の人が運んでくれたそうだ。

おじいさんやおばさんが心配して来たが、この目が飛び出た奇妙な少年の話をすると、急に曇った表情になり

「なーんも起きなかったよ。夢だ。ここで見たことは忘れろ」

それだけだった。

どうしても気になり、後日その木戸の辺りへ行った。

やっぱり小さな足跡が無数にあった。

しかし、足の指の数が5本ではなかった。

山梨の家に帰り、この話をすると誰も信用しなかったが、母だけが言った。

「その子を見たら、100日以内に死ぬって言われたわ」

A君はぞくっとして聞いた。

「僕、見ちゃったんだよ、どうしよう?」

「お母さんはもう38年生きているから大丈夫よ」

A君は胸をなでおろした。

だがお母さんはその2年後に乳ガンで亡くなった。

もしかしたら、自然界の100日と人間界の100日は大きな時間軸のずれがあるのではないだろうか……とA君は恐ろしくなった。

後で別の地域で聞いた話だが、山の神の怒りがやまびこで、その少年は使いの童だという。怒りに触れた家には童が来て災いを言い渡しにくるそうだ。

童が話す言葉は人間の言葉ではないという。

「ギギギギギギギギギギ……」

それを聞いてA君はますます怖くなった。

おじいさんや親せきの家は一体何の商売をしていたのだろうか? 災いを受ける程のことを山でやったのだろうか……先祖は鉱山の仕事をしていたとは聞いていたが、山で何を掘っていたのかはわからない。

と、もうすぐ40歳になるA君が病の床で話してくれた。

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