水戸街道 国道6号線の魔(東茨城郡茨城町) | コワイハナシ47

水戸街道 国道6号線の魔(東茨城郡茨城町)

一番怖い茨城の道はどこかと尋ねると、ほとんどの運転手がこう答える。

「やっぱり国道6号線だな」

国道6号線は、水戸から南は「水戸街道」と呼ばれる由緒ある街道であり、江戸まで続く五街道に準ずる脇街道の1つだ。

Uさんは福島に住む長距離トラックの運転手だった。

深夜になると、車も少ない。

高速を使わずに福島から国道6号線を通って茨城に入っていた。

だが、Uさん曰く

「いつも道路に花がたむけられていて、毎回同じ場所なんだよな、それが」

というくらいの事故多発地帯だ。

いわきのトンネル内で事故があり、それを見てしまった。大破した車両は白いセダンのAという車だった。走り屋が特に好む車だった。

パトカーや救急車が来る前だったので、まだ事故直後の現場である。

その横にバイクが倒れていて、どうやら車とバイクが接触した事故のようだった。

しかし、一番ぎょっとしたのは、倒れていたバイクの横に横たわる人間だった。ヘルメットは飛んでしまって、首から下の胴体しかないのだ。手がまだピクピクしてるのが見えた。

真っ赤な血があふれる首。もちろん生きているはずはないだろう。

「く、首は?」

一瞬だったが、そのトンネルの壁に首が張り付いているのが見えた。すぐ目をそむけた。

(いやなもん見ちゃったな……南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……)

Uさんは心の中で手を合わせた。

大破しているセダンの方をみると、運転席と助手席から誰かの腕が見えた。こっちはまだ生きているようだ。

警察に通報し、Uさんは先を急いだ。

早朝に都内に着いて、荷物を運んだあと、同じように6号線をのんびり走っていたときだった。また事故車両があった。

それがいわきで見たのと同じAという車種。色は黒だった。またバイクが転倒していて、パトカーが取り囲み、ブルーシートで覆われていた。

(同じような事故が起きんだな……呪われてるなあ、この車も道も)

その日は違うルートで福島に帰ることにした。

それから3日後の深夜、事故のあったトンネルを通った。例の首が張り付いていた壁を恐る恐る見ると、人の形のようなシミが見えた。

まだ血がこびりついているんだな……そう思って通り過ぎた。

水戸を通りすぎ、長岡あたりに来たときだった。トラックに付けていたレーダーが異様な音をたて始めた。焦って触ると運転に支障がある。

「何かおかしくなっちまったかな」

そう呟いて、路肩にトラックを止めようとしたときだった。

先のゆるいカーブの先に何人も立っているのが見えた。よく目を凝らすと、手を振っている。Uさんに向かって振っているようだった。

「おいで、おいで」

Uさんは路肩に停車させ、目を閉じた。

(俺は呼ばれてる。絶対に見ちゃだめだ)

しばらくこのままレーダーが鳴りやむまで、じっとしていようと直感で感じたのだ。

レーダーの音が消え、目を開けた。

その間、何台かの車が右横を走り抜けた。

爆音を立てながら右横を猛スピードで走りぬけたバイクがあった。

そのバイクのライダーをよく見ると、首がない。

「ガシャーン!」

すぐに激しい衝撃音が響いた。

見ると、白いセダンが道の先で何かに衝突して大破しているのが見えた。

また同じAの車種。しかしバイクはなかった。車の自損事故のようだった。

Uさんはもう通報もせずにその場を後にして走り去った。

帰りにまたその場所に行くと、花が置いてあった。あの運転手は亡くなったのだろう。

その日から腰や首の調子が悪くなった。トラックもレーダーが故障したり、急にブレーキが甘くなったりするのだ。

修理工に頼んでもどこも悪くないという。

そこで神社にお祓いに行き、自分が見たものを神主さんに話した。

「なるほどね。Uさんには憑いてないけども、そのトラックは借り物?」

「ああ、はい。会社のトラックです」

「このトラック、以前死亡事故起こしてるね。顔がいっぱい張り付いてるよ。で、Uさんの肩にも首だけ出てる人がいる。すぐお清めしよう」

Uさんはぎょっとした。俺の肩に首が……。

「あの、いつも事故に遭遇してしまうんですが、同じAって車が事故ってんです。で、首がないバイクの人も走っていて……」

混乱しながら話をした。神主さんはうなずいて言った。

「そのAって車、事故車両だろうね。事故った車のパーツとか使ってるんじゃないかな、バイクは、Uさんの肩に憑いてる人が見せてる幻覚だろうね。どこかで遭った知り合いかな? この霊は随分強い念があるなあ。ここに来なかったら、君もその事故車両と同じ目にあうところだったろうね」

「いや……、知り合いじゃないけども、死体を見たので……」

「その時、可哀そうだとか考えなかった? そういうのも憑りつかれやすくなるんだよ」

「だって、目の前で死んでたら手ぐらい合わせたくなりますよ」

それ以上は何も言えなかった。

Uさんはお祓いを受け、それから程なくして、トラック運転手を辞めたそうだ。

昔からの街道筋には何かといわくがある。

埼玉のとある街道では、〇〇宿と名付くところには「晒し首」の場所があったという意味も含む。それは川の近くが多い。水戸街道にも○○宿と呼ばれる場所は多数ある。

また、6号線沿いに磔の刑場や首から下の胴体を埋めたところもある。

事故が多発するところで、誰かに呼ばれてもそっちにだけは行かないようにしないと……。

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