撮り鉄 ホームとの隙間(茨城県土浦市) | コワイハナシ47

撮り鉄 ホームとの隙間(茨城県土浦市)

「電車とホームの隙間がかなり開いております。お気をつけてお降りください」

常磐線でのアナウンスを聞くと、つい、その隙間を覗きたい衝動に駆られる。

真さんが『特急ときわ』に乗ったときのことだった。

都内から日立へ戻るため、終点の勝田で普通列車に乗り換える予定だった。

ところが、その日はなんだか気分が悪く、頭痛に吐き気がし始めた。

(なんだ? この匂いは……)

どうも異臭がする。アンモニア臭だ。電車のトイレの消臭機能がおかしくなったんだろうか。座席を見まわしたが、変な乗客がいるわけでもなさそうだ。

特急は指定席になるので、別の席に移れないか車掌に聞きに行こうと思って席を立った。

しかし先頭車両なので、車掌がいるのは一番後ろか……仕方なく外の空気を吸いに出ようと、到着した土浦駅で一度ホームに降りた。

ホームに降り立つ時、足もとに何か違和感があり、電車とホームの隙間を見た。

血だらけの人の顔があった。

顔半分は血だらけで、砂利みたいなものがべったりと付いた赤と黒が混じったような顔、髪の毛は皮膚ごとそげているのか、見当たらなかった。

ただ、目だけはランランと光って飛び出ていた。顔が半分電車の下からニョキっと出た感じだ。これは……何だ? もちろん生きてる人間じゃないのはわかった。

「うわあああ……」

真さんは声を漏らし、ホームに降り立った。

この電車に乗っていたら何かある、真さんはそう直感した。

土浦のホームに降りたまま、その特急には乗らずに見送ってしまった。少し休んで、次に来る普通電車に乗ろうかと時刻表を見ていたときだった。

電子掲示板に「電車遅延」のお知らせが出た。

「人身事故のため、土浦〜勝田まで上下線運転見合わせ」

真さんはハッとして、駅員に聞いた。

「人身事故って……さっきのときわですよね?」

駅員は乗客の対応で忙しそうだったが、

「……そうですね。友部か赤塚で起きたようです」

土浦の先で飛び込みがあったそうだ。この車両かどうかはわからないが、その可能性があるとのことだった。あのまま乗っていたら、先頭車両だったので嫌なものを見たかもしれない。

事故後、ときわの先頭車両にべったりと人の血がついたまま走っていた、と目撃情報もあった。あの隙間から飛び出した顔、それはこの先の予見だったのかもしれない。

それ以来、真さんは「ホームと列車の隙間」を見るのが怖いそうだ。

つい、引きずりこまれるような感覚があり、ホームにいると誰もいないのに押されるような感覚もあるそうだ。

意味なくホームから線路を覗きたいという感覚に襲われるときは、気を付けた方がいい。背中に黒い影が立っている可能性があるという。

僕も時々電車のホームから線路を見ると、何となく引き込まれるような気がする。だから一番前には並ばないようにしている。こうした話を書いているせいか、危険な場所で背後に誰かに立たれるのが怖くなってもいる。

「いつか、僕も黒い影に引き込まれますよ。今までの体験は、その暗示なんですよ」

真さんはそれでも電車が好きで写真を撮り続けている。

何かに憑りかれたかの如く。

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