ホテルのエアコンの中にあるもの(名古屋市中村区) | コワイハナシ47

ホテルのエアコンの中にあるもの(名古屋市中村区)

W氏は名古屋での出張を終えて、夜、新幹線で東京へ帰る予定だった。しかし台風の影響で新幹線のダイヤが乱れて急遽、宿泊することになった。

駅前のビジネスホテルやカプセルホテルは満室で、かろうじて駅裏の簡易宿泊所が一室だけ空いていた。

ここは主に日雇い労働者が泊まる場所らしく、料金は格安だった。古びた細長いビルの入口がロビーで、料金を前払いで支払った。

室内は三畳。片隅にテレビが置かれ、畳に布団を広げて荷物を置くと、スペースはほとんどない。あとは寝るだけだ。布団はシーツを替えているとはいえ、汗ばんだ臭いが染みついている。

ま、しょうがないな……。窓を開けると、網戸が破れていた。これでは虫が入り放題だが、どうせ台風の暴風雨で窓は開けられない。エアコンは苦手でも、この蒸し暑さだけに、付けっぱなしにするしかなかった。

壁を見てW氏は驚いた。エアコンが二台並んで設置されていたのだ。

たぶん、汚れも目立つ左側のエアコンが故障しているのだろう。W氏がリモコンを探すが、一台しか見当たらない。

とりあえずきれいなエアコンに向けて、リモコンのスイッチを入れるが、作動したのは隣の古い方だった。

ブゴゴゴッ……と古いエアコンがうなるように作動を始めたが、いっこうに冷風は吹かず、むしろ肉が腐ったような異臭を放ち始めた。

W氏は顔を歪めて、慌ててエアコンのスイッチを切った。

しかしエアコンはなかなか動作を止めない。異臭も続いた。

とりあえず止めないと。異臭にめまいを覚えながらW氏は背伸びをして、エアコンの正面のフタをはずしてみた。

そこにはフィルターの上には無数のくしゃくしゃの、黄ばんだ紙が敷き詰められていた。

なんだ、これ……。

W氏が手に取るよりも早く、その一枚がはらりと床に落ちた。拾うと、文字が印刷されている。

おみくじだった。

「なんで、おみくじ……? って最初は思いましたけど、おそらく神社に巻かれていたのを勝手に持ってきて、ここに貼ったんでしょう。お札の代わり? 厄除けか何か知らないけど、ドケチな名古屋らしい発想だなって思いましたよ」

その後、テレビ台の奥から、もう一つのリモコンを見つけて、W氏は新しいエアコンを作動させた。こちらはすぐに冷風が吹き始めた。

古いエアコンはその後も奇妙な音を響かせ続けた。腐敗臭と共に、それが時折、人のうめくような声にも聞こえたが、しばらくすると完全に止まってしまった。

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