長久手古戦場でのサバイバルゲーム(愛知県長久手市) | コワイハナシ47

長久手古戦場でのサバイバルゲーム(愛知県長久手市)

廃墟などと共に、怖い噂のある場所として、よく話題に上るのが、城趾や古戦場である。

東京郊外の八王子などは心霊スポットとして有名だが、古戦場のメッカといえば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑を世に送り出した愛知県も負けていない。

「桶狭間古戦場伝説地(豊明市)」など、歴史マニアのみならず、心霊マニアにも知られている場所もあるが、中には拍子抜けしてしまう、単なる観光地と化した場所も少なくない。

そんな中で、個人的に特にやばいと感じたのが長久手古戦場だった。

天承一二年(一五八四年)に豊臣秀吉と徳川家康が激烈な戦いを繰り広げた「小牧・長久手の戦い」の主戦場跡地で、国の史跡に指定されている。現在、この場所は「古戦場公園」として整備され、園内には、縮景という手法で古戦場を模した広場や、秀吉方の武将、池田勝入、元助父子の戦死の碑「勝入塚」などが存在する。

リニモが開通した際には「長久手古戦場駅」までできて、近くには巨大なホームセンターもあり、近くショッピングセンターがオープン予定など、急速に発展を遂げている。

昨年、所要のついでに、私は初めてこの駅に降りた。周辺はきれいに整備され、駅から歩いてすぐにある古戦場公園も真新しい住宅に囲まれ、外からは古戦場の面影がほとんど感じられない。

もう、すっかり観光名所だな……こりゃたいしたことないだろう……。正直、私は残念に思えた。

しかしいざ公園の中に入ると、徐々に空気の変化を感じて、首を傾げた。

そして古戦場を模した広場に足を踏み入れた瞬間、思わず「うわっ……」とつぶやいてしまうほど、不穏かつ異様な空気に圧迫された。

広場には、ソメイヨシノやクロマツ、クスノキなどの木々がうっそうと茂り、昼間でも薄暗く、夜ならばかなり不気味な雰囲気だろう。重苦しい空気に加えて、緩やかな傾斜と木々がどこか平衡感覚をかき乱した。

断っておくが、私は霊感がほとんどないと思っている。ただ、心霊スポットや心霊動画、心霊写真でも、本当にやばいものは、なんとなく気持ちが不安になるし、落ち着かない。ここの古戦場はまさにそんな感じだった。

もちろん感覚は人それぞれで、だからこそ周辺にも住宅が並んでいるし、公園には家族連れやカップルもいる。この場所が全く何も問題ないという人も多いのだろう。

ただ、私は長居は無用とばかりに一通り見学して、足早に公園を後にした。

その後、私はこの古戦場公園で霊を目撃した証言するS氏から匿名を条件に話を聞くことができた。

彼はサバイバルゲームが趣味で、仲間と専用の施設で遊んでいたが、この古戦場公園の噂を聞きつけて、ぜひ一度プレイしてみたくなったという(実際他にも公園で実践した者がいるらしい)。

もちろん公園なのでサバイバルゲームの許可が下りるとも思えない。S氏はある秋の夜、周囲に人がいないことを確認し、仲間五人とこっそりゲームを始めた。

木々が多いことや傾斜があることで、ゲームは想像以上に盛り上がった。S氏はエアガンにライトを取り付け、木々に隠れる敵に向かって銃を連射した。昼間と違い、周囲の住宅街の明かりもほとんど気にならず、S氏は山中でプレイをしているような臨場感を味わった。しかも、今この場所が激烈を極めた合戦の舞台と思うと興奮もひとしおだ。

古戦場すげえ! とS氏は素直に感心した。

ただS氏は徐々にゲームの醍醐味とは別の緊張感を覚え始めた。

周囲からやたらと視線を感じるのだ。それも一人や二人ではなく、十人、二十人、いやそれ以上の数え切れない視線を……。もちろん仲間が移動して、そう錯覚したのかもしれない。

S氏が闇に慣れてくると、今度は木々の影に、人らしき者が隠れているのがわかった。しかも、それもまたあちこちの木から……。ゲーム参加者は自分を含めて六人。明らかにそれ以上の人が隠れている……。

きっと、こっそり見学している奴がいるんだろう。S氏はそう言い聞かせた。

仮に関係ない人が紛れていても撃たなければいいだけだ。決意したS氏は数メートル先のクスノキに隠れた人影に近づき、一気にその正面に立ってエアガンを向けた。

「!」S氏は息を呑んだ。そこには血まみれの顔をした男がいた。その顔に見覚えがあった。ゴーグルをはずした自分自身の顔だった。

がく然とするS氏にまばゆいライトが向けられた。ひるんで後ずさりした彼の胸にBB弾が命中した。

いつのまにか目の前には、S氏の友人A氏がエアガンを向けて立っていた。

「Sさん、どうしたんですか? いきなり現れた時はびっくりしたのに撃たないなんて……」

S氏はただ苦笑いするしかなかった。その時だった。背後で男の悲鳴が上がった。

S氏が振り返ると、離れた場所で、サバゲーに参加中の友人B氏が倒れて、白目を剥いてうめいていた。

なんだ……?

B氏は手に持つエアガンを顔面に向けて連射していた。いくら安全なBB弾でも至近距離で撃てば負傷してしまう。

「おい、やめろって!」S氏が、暴れるB氏からエアガンを奪った。しかし今度は錯乱したように意味不明のことを叫びながら、B氏は傷口に爪を立てて、皮膚をかきむしり、みるみる顔面が血まみれになった。

ゲームは中断され、B氏は仲間の車で病院に運ばれた。

医者には「公園で遊んでいてケガをした」と説明したが、医者は「ああ、そう……」と言うだけで、それ以上詳しいことを聞こうとはしなかった。おそらく他にも似たようなケースがあったのだろう。

B氏は病院に入る頃には眠ってしまい、公園で錯乱していたことは何も覚えていないという。ゴーグルを付けていたので失明こそ免れたが、顔にはいくつもの生々しい傷跡が残ってしまった。

S氏はその後、古戦場はもちろん、無許可でサバイバルゲームをすることをやめたという。

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