ホテルY(愛知県岡崎市) | コワイハナシ47

ホテルY(愛知県岡崎市)

廃墟ものの映像企画を準備していたプロデューサーのX氏は、帰省した際、実家に近い岡崎市内で、「数年前に潰れたホテルYがなかなか不気味で雰囲気が良い」というネットの噂を聞きつけ、車で立ち寄ることにした。

岡崎で廃墟ホテルといえば「ホテル藤川」が有名だが、手垢にまみれた廃墟物件ではDVDのセールスがのびないため、あまり紹介されていない穴場の物件をいち早く収録することが大事だった。

幸い最近は不況でバブル期や高度成長期に建てられたホテルが潰れる事案が増えていた。今はいかに早く未知の優良物件情報を探し出すかに、作り手もしのぎを削っていた。

X氏は教えられた町でホテルYを探したが、年代物のホテルなのか、カーナビにも登録されておらず、写真もないため、なかなか見つからない。町から離れた場所まで車で回ったものの、気がつけばすっかり日が暮れていた。

同じ町には似たようなホテルが営業していたが、こちらはロビーに客があふれて繁盛していた。さすがにフロントで廃墟のことを聞くのも気が引けた。

結局、お目当ての廃墟は見つからず、X氏は東京に戻った。

しばらくしてX氏は、ネットに、廃墟ホテルYの潜入動画がアップされているのを見て、あっとなった。ホテルYとして紹介されたのは、X氏が車から見かけた、あの繁盛していたホテルだった。

動画では、ロビーには人影もなく、窓は割られ、壁にはスプレーの落書きが目立ち、床にはゴミが散乱して荒れ果てている。

もしもあの時、ロビーに行って、廃墟について聞いていたら……俺はどうなっていただろう。X氏は動画を見つめながら複雑な思いに駆られた。

噂では、ホテルYとその周辺には、無数の浮遊霊が目撃されるという。

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