金の亀(愛知県名古屋市中村区) | コワイハナシ47

金の亀(愛知県名古屋市中村区)

地下鉄「中村公園駅」から名所の大鳥居を抜けた参道の先、中村公園内にあるのが豊国神社だ。通称、太閤神社。豊臣秀吉の生地で、秀吉を祀る神社である。

私の実家からも自転車で行ける距離にあるため、子供の頃はよく通っていた。

小学生の一時期、この神社の池で、ある噂が広まった。

何でも神社の池に〝金色に光る亀〟が生息しているという。

池には昼間なら石の上でクサガメが甲羅干しをしている光景をよく見かける。しかし、金色に光る亀は、私はもちろん友達の間でも誰も見たことがなかった。

過去に目撃した人によれば、夜、神社を訪れた際、池がぱあっと光り始めた。すると、その中心に輝く亀が水面から現れたというのだ。噂では、光る亀を目撃すると、秀吉のように出世できるという……。

もともと秀吉にあやかって「出世の神社」といわれる上に、「金の茶室」などの秀吉の成金趣味に亀を引っかけたものであることは、子供ながらに容易に想像がついた。しかし、そんな安っぽい噂でも、未確認生物であることには間違いなく、当時の子供達は色めき立った(当時はUMAなどという言葉はなかったが、ネッシーなどの空前のオカルト&未知の生物ブームだった)。

「金色の亀を捕まえたら中日新聞に載るかな?」「いや、CBCのニュースで放送してくれるよ」などと友達と大いに盛り上がった。

当時の池での釣りと言えば、空の牛乳瓶にたこ糸を結びつけ、釣り用の練りエサを入れて沈め、小エビを捕まえる程度だった。しかし幻の金の亀捕獲用に、小型のバケツを用意し、中にミドリガメ用のエサを二、三個入れて、たこ糸で結んで池に沈めてみた。すぐには捕まらないだろうと一日待ってみることにした。

翌日の放課後、たこ糸を引っ張って、バケツを引き上げてみたものの、光る亀はもちろん中には子エビすら入っていなかった。

友達が「エサが足りないんだよ」と言ってミドリガメのエサをたくさん投入し、さらに子エビ用の練りエサも追加し、再び池に投下した。

翌日、再びバケツを引き上げると、エサが溶けて濁ったバケツの底で何かが動いた。数匹の子エビに混じって、体長二十センチほどの亀のシルエットが見えた。しかも、その甲羅は黄色く、うっすらと輝いているように見えた。

「すげえ! ホントに光る亀が捕れた!」

皆、興奮の絶頂に達しながら、バケツを地面に近付け、中のものを水ごとぶちまけた。

地面でピチピチはねる子エビと共に、一匹のクサガメが横たわった。その背中の甲羅はたしかに毒々しいまでの黄色に覆われて、不気味に蠢いていた。それは無数のヒルだった。黄色の表面に青や黄土色のラインが入った、グロテスクで不気味なヒルが、死んだクサガメに群がっていたのだ。亀の頭や首、手足にも黄色いヒルが吸い付き、ひしめている。

みんな、一転して笑いとも悲鳴ともつかない声を上げるしかなかった。

ヒルは、より新鮮な血に気付いたのか、亀の死骸から離れ、わさわさと地面を這って私たちに近付き始めた。

私はあわてて木の棒でつついて、亀の死骸とヒルを池に戻した。

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