される話(大阪) | コワイハナシ47

される話(大阪)

漫画家の駒沢君が体感した話をしよう。

駒沢君は、上京してくる前は郷里の大阪にいた。

実家は取り立てて怪異が起きたこともない、ごく普通の家だった。

その一件を除けば。

実家の一室が駒沢君の寝室に充てられていた。

その日、いつもと同じように帰宅した駒沢君は、いつもと同じように身支度を済ませて、いつもと同じように床に就いた。

深夜。

気付いたときには、そいつは既に駒沢君の布団の中に居座っていたらしい。

身体は動かない。金縛りという奴だ。

動けずもがいている駒沢君の身体の上に、重みが感じられた。

何かが身体の上に乗っている。より正確には、誰かが自分の腰にまたがって動いているようだ。

身体は固く戒められたままで、身体の上にいる誰かに手で触れることも目で見ることもできない。

しかし、覚えのある感触だけが身体の一部分から感じられる。

ぬめぬめとした粘液の絡みつく感触。

湿った粘液がゆるゆる動く感触。

リズミカルに動き、時折締め付けるようにぴくりと止まる。

他の何にも触れることはできないのに、触れているその部分からだけは、妙に温かい内臓の温度が伝わってくる。

(誰かが……俺の上で……)

駒沢君の身体の上に居座っているそいつは、明らかに彼を一方的に嬲なぶっているようだった。そいつは騎乗位のまま、上下に腰を動かして楽しんでいるらしい。

何とか目を見開いてみた。

だが、今正に女の下半身が蠢うごめいているはずの空間には、何も見えなかった。そればかりか、駒沢君の寝着や下着は床に就いたときと変わらず、全く乱れていない。

にも拘わらず、彼の下半身にまたがり駒沢君を嬲り楽しんでいる「感触」だけは、明け方近くまで続いた。

彼の翌日の感想は。

「……むっちゃ、良かったですワー。また出てくれへんかなぁて思うてんけど、あれからこっち出ぇへんのやわぁ」

飯島さんもよく似た体験をしている。

横浜の実家で暮らす飯島さんは、度々金縛りに遭うなど心霊方面の経験を少なからず持っている女性である。

その晩、飯島さんは悪夢に魘うなされていた。

その夢の中で、飯島さんは中年の男にのしかかられていた。男は表情を醜く歪めて飯島さんの身体にむしゃぶりつき、もがく彼女を押さえつけては無理矢理犯すのだ。

散々抵抗した飯島さんが力尽きるのを待ち侘びるようにして、男が彼女をむさぼり始めた頃、飯島さんは微睡まの中で夢の終わりが近いことを予感していた。

夢が覚める直前、自分をむさぼる中年男の顔が自分の父親のそれになっている。いつもそうなのだ。日常で、彼女と父親との関係は至って正常であるにも拘わらず、夢の中にあって彼女を犯す男は、常に父親の顔をしていた。

それが嫌だった。

夢から覚めた直後、飯島さんの身体は金縛りに遭っていた。身体を動かすことはできなかったが、意識はしっかりしていて自分が夢から覚めたこともはっきり自覚できた。

そして……何かが、動けない飯島さんの身体の上にのしかかっていた。

もちろん、父親ではない。

自分にのしかかっている誰かがいるべき場所には、父親どころか誰の姿も見えないのだ。

だが、直前まで夢に見ていたのと同じ体位を取らされている飯島さんの身体の上に、その〈何か〉はのしかかっていた。目に見えない何かは、しきりに身をよじって飯島さんの身体をまさぐっている。

(あっ……)

それが夢の続きなのかどうかはわからない。

ただ、〈何か〉が金縛りにした飯島さんの身体を嬲るだけ嬲っていったことが夢でない証拠に、自分の股間に陰茎が出入りする感触がはっきり感じられた。

(動いてる……)

姿は見えないのだから、言ってしまえば「陰茎だけの幽霊」と言えなくもない。そいつは思う存分飯島さんの身体を楽しんだ後、彼女にたっぷりの疲労感を残して消えた。

「……それって、かなりイヤじゃない?」

「そりゃイヤよ。でも、イヤって言って来なくなるもんでもないしねぇ……どっちかと言うとお父さんの顔して襲いかかってくる夢と、いつもセットになってるってことのほうが困っちゃうよね。翌日、何か顔合わせづらくなっちゃうしさぁ」

「そりゃ、確かに迷惑だわなぁ」

悪夢に便乗しては強姦を働くこの幽霊は、その後も飯島さんの部屋に現れている。

初めて現れたときの正常位に続き、二度目に現れたときの体位は後背位だったそうだ。

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