病院の女 その1(神奈川県伊勢原市) | コワイハナシ47

病院の女 その1(神奈川県伊勢原市)

それではお次は、私が初めて〝幽霊〟という物をこの目で見た時のお話をいたしましょう。

幼稚園の年長組さんの時に、祖母が入院をしました。その年は祖母の通院が多く、私も幼稚園をちょくちょく早退しては祖母の付き添いで伊勢原市のM病院を訪れていました。

祖母は生まれつきの弱視で視力が弱く、その上、今回は白内障と診断されたので、通院の結果、手術をする事に決まり入院をしました。

私はいつものように、祖母の付き添いで母と祖母と3人で病院に向かい、その日は祖母を残して母と2人で家に帰りました。

そして、また次の日に祖母のお見舞いに向かいます。そんなある日。

「明日は手術当日だから、その日の夜は病院に泊まってもいいよ」

と主治医の先生に言われたので、祖母の手術当日の夜はそのまま祖母と同じ病室に泊まる事になりました。

私は前の日から、祖母と一緒に部屋に寝る事と、家とは違った環境に一泊する事にとてもワクワクとして楽しみな気持ちでヤッター!! なんて思っていました。

当日、母は私が退屈しないようにと、ぬり絵やリカちゃん人形などを入れた私専用バッグを作ってくれ、祖母の元へウキウキで向かいました。

「おばあちゃん、来たよ」

いつものように祖母に声をかけます。

「今日はね、おばあちゃんと一緒に寝れるんだって。嬉しいなぁ」

「おばあちゃんも嬉しいよ。手術頑張るからね」

「うん。おばあちゃん手術頑張ってね」

そんな会話を祖母としていたら、先生が病室に入って来て、母と祖母と3人で話をし始めたので、案の定退屈になった私は母が持たせてくれたおもちゃの入ったバッグを持って入院患者さんの集まるロビーへと遊びに行きました。

「菊実仔ちゃん来たの」

そこに集まる入院患者さん達は、私の顔見知りの人ばかりです。

祖母が通院していた時からの顔なじみや、入院してからの患者さん達など、私がしょっちゅう病院に来ているもので、

「おばあちゃんの付き添いえらいね」

「目の悪いおばあちゃんの手をひいてえらいね」

などと、みんな声をかけてくれて、すっかり仲良くなっていました。

「今日はね、お人形さんとかおもちゃ持って来たんだ」

私は意気揚々とソファーの上にお人形さんを並べて、

「これはリカちゃんでしょ」

とか、入院患者さんと楽しい時間を過ごしました。

そして、もうお昼時なのか、みなさんが病室に戻るので私も戻ろうとひとり、祖母の病室へと戻るために長い廊下を歩いていました。

その廊下は昼間だというのに、なんだかとても薄暗く感じ、〝早く帰ろう〟そう思いながらふと前を見ると、ひとりの中年の女性が歩いてきます。

(見た事ない人だ)

入院患者さんではないのか、長い茶色のストンとしたロングスカートをはいています。

だんだんとその女性と私の距離が縮まり、私はじーっと女性を見つめたまま、何故だか目が離せないのです。

私は女性の顔を見つめたまま……。

その瞬間、一瞬でした。

彼女が私を見てニヤッと笑ったのです。

口だけでニヤリと笑い、何故だかおかしい事に、女性の目のあたりは真っ黒になって見えないのです。髪はセミロング丈だったのですが、髪で隠れていた訳ではなく口から上が見えないのです。

闇の下に口だけが浮かび上がるようにニヤリと動いたのです。

その異様な表情に「これはおかしい」と思った私は、とっさに振り返ります。

しかし、そこには誰もいません。

さっき、すれ違ったばかりの女性の姿がないのです。

「ウワー!」

私は叫びたくなるような声を押し殺して必死に走って母と祖母の待つ病室へと帰ります。

「やっぱり人間じゃなかった」

あまりにもビックリして怖くて、声を出したくても出せなかったのかもしれません。とにかく私は必死で病室へと戻りました。

その日、祖母は無事に手術を終えて、いよいよ3人で寝る夜がきました。

看護師さんが小さな簡易ベッドを一つ持って来てくれて母と2人で寄り添って寝ます。

私はどこか複雑な気持ちでいました。

「3人で寝る事をあんなに楽しみにしていたのに……」

今日あった出来事をまだ言い出せずにいました。思い出すのも怖くて、口にしようとしても声が出ないくらいなのです。

ひとり用のとても小さいベッドで、いくら6歳くらいの子供といえども2人で寝るには狭いのですが、母が私をぎゅっと抱いて寝てくれる事が唯一の救いでした。

「大丈夫、大丈夫」、そう自分に言い聞かせるようにして眠りについた私に、更なる恐怖が襲いかかるなんて思いたくもなかったのです。

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