来なくていいよ(神奈川県松田町) | コワイハナシ47

来なくていいよ(神奈川県松田町)

祖母には大変仲の良い友人がいて、松田町に住んでいました。

この友人は小さい雑貨店を営んでいて、私もちょくちょく遊びに行ったりもして、私は「かみ屋のおばあちゃん」と呼んでいました。

週に何回かは遊びに行っていて、おしゃべりだけで過ごせるほど、2人は親友のような仲だったのです。

その日も祖母はかみ屋のおばあちゃんのお店に遊びに来ていて、今度久しぶりに2人でどこかへ出かけようという話になりました。

その日を◯日の×曜日と決めて、楽しみにしていたのです。

そして当日。

早朝に電話のベルが鳴ったのです。

チリリリリーン チリリリリーン

こんな早くに誰だろうと思いつつも、その音で起きた祖母は電話に出ました。

「来なくていいよ 来なくていいからね」

と、それはかみ屋のおばあちゃんのいつもと変わらぬハッキリした声でした。

おばあちゃんは、それだけ言って切ったので、「え!?」とびっくりした祖母でしたが、「来なくていいって言ってたけど、今日の約束は都合が悪くなったのかしら」と思って、おばあちゃんとの約束には出かけませんでした。

その日の夕方頃にまた電話のベルが鳴ったのです。

「あ、いつもお世話になっています。

〇〇の夫です」

それはかみ屋のおばあちゃんの旦那さんからでした。

旦那さんから電話なんてくるのは初めてに等しいのでビックリした祖母は、

「あら、どうしたの?

おばあちゃんに何かあったの?」

と聞きました。

そうしたら、旦那さんが重い口調で、

「実は……」

と切り出したのです。

「昨日の夜のことなんですけど……

うちの家内が亡くなりまして、

葬儀のご案内でお電話したんです」

と。

「え!?」

祖母は言葉を失いました。

「そうですよね、急ですもんね。

私の方でも、急なことに慌てていますよ」

祖母の言葉が見つからないのは、おばあちゃんの死を急に告げられたこともあったのですが、昨日の夜に亡くなったはずの本人から今日の朝に電話があったからなのです。

本当は、

「奥さんから、今日の朝に電話がありましたよ」

と言いたかったのですが、お悔やみ申し上げますと伝えて電話を切る他になかったのです。

これはかみ屋のおばあちゃんのお葬式で聞いた話なのですが、

その日、息子夫婦とお孫さんが久しぶりに遊びに来ていて、みんなで楽しく夕食を囲んでいたそうなのです。

家族みんなでキャッキャ笑い合って、おばあちゃんは大笑いしながら、ちゃぶ台の後ろに倒れこんで笑ったのです。

そして、少ししても起きてこないので、

「お義母さんいつまで笑っているの?」

と声をかけたらすでに亡くなっていたのです。

私は、いまだかつてこんな素晴らしい亡くなり方をした人を見たことがありません。

大往生もいいところです。

そんなかみ屋のおばあちゃんなので、祖母にお別れの言葉を言いたかったのだと思います。

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