阿弥陀寺の洞窟(神奈川県箱根町) | コワイハナシ47

阿弥陀寺の洞窟(神奈川県箱根町)

箱根町には、由緒正しい古いお寺がいくつかありますが、中でも阿弥陀寺は大河ドラマ『篤姫』でも知られる皇女和宮の終焉の地であり、あじさいの綺麗な古刹で知られています。

地元の恒例で小学4年生のちょうどあじさいが綺麗に咲き乱れる時期に、この阿弥陀寺へ遠足へ行くことになりました。

阿弥陀寺へは箱根湯本駅から歩いて行くコースで駅横を登っていきます。

箱根のお寺へはちょくちょく行っていましたが、この阿弥陀寺へ行くのはこの遠足が初めてでした。箱根とは文字通り山に囲まれた地ですので街中も坂道ばかりで、地元の人はだれも自転車に乗らないような通りばかりなのです。

阿弥陀寺へ行く道もまたそんな坂道を上へ上へと歩いて行きます。

この日は蒸し暑い日でしたので、尚更目的地までがキツく感じました。

「ふ〜〜ふ〜〜」

と息を鳴らし、約40分の道のりを上へ上へと歩き続け、やっと小さなお寺にたどりつきました。

阿弥陀寺は思っていたよりも小さく古い木造のお寺で歴史を感じさせます。

子供ながらにも大変重々しい雰囲気に

(凄いなぁ)

と思ったことを覚えています。

そこでお弁当を食べたり、お参りをしたりして過ごしました。

そして何より、お目当てのあじさいが、青や薄むらさきなど色とりどりにいっぱい咲いていたのです。どのあじさいも満開でお友達と境内のあじさいをぐるぐると見て回りました。

「きれいだね」

「大きいね」

確かに阿弥陀寺のあじさいは、他で見るあじさいと違って大きかったような気がします。

そうして、あじさいを楽しんでいると、

「みんな行きますよ」

と言う先生の声がしたので、みんな先生の所に集まりました。

「今からこのうえにある洞窟の中を行きます」

この阿弥陀寺の裏山には、350メートルほど登った所に、阿弥陀寺を開山した弾誓上人が篭って修行したと言われる洞窟があります。

そして、この洞窟の中を各班ごとに順番に進んで行きます。

先頭の先生の後ろに班のみんなが続く中、私の班は1番後ろになってしまい、最後にこの洞窟の中に入りました。

入った直後なのでまだ目が慣れないのか、凄く真っ暗で何も見えません。

入る時に引率の先生が中は危ないからと言って手をつないでいてくれました。

「真っ暗で何も見えないよ先生。怖い……」

と口にする私の手を先生はギュッとにぎってくれます。

そうして真っ暗な洞窟の中をゆっくり一歩ずつ進んで行くと、急に先生が、

「わっ!!」

と悲鳴を上げて、

「危ないから絶対に離しちゃだめだよ」

と言っていた私の手を離したのです。

そして、

「今だれかにさわられた!」

と言って一生懸命に背中を払っているようなのです。

私は、先生に何があったのかわからなかったのですが、だんだん慣れてきた目で先生を見てみると、今度は左手をつないでいた友人の手も離し、両手で一生懸命に背中やら肩やらを払っているのです。先生の右手をつないでいた私も、左手をつないでいた友人も心配になって、

「先生どうしたの? 大丈夫?」

と聞くと、

「誰かにさわられた。ひっぱられた」

と泣きそうな顔で言うのです。

私達はこの列の最後尾で、その後ろを行く人はだれもいません。他の観光客さえも居なかったのです。

こうしているうちに、先生も早く列に追いつかなければいけないと気付いたのか、

「もう大丈夫だから行こう」

と言って再び私達の手をつないで歩き始めました。

(本当に大丈夫なのかなぁ……)

そう思い先生を見上げてみると、先生の右肩に、白く浮かび上がる手のようなモノが載っていたのです……。

「うわっっ」

と思いましたが、あんなにパニック状態になっていた先生を怖がらせる訳にはいかないと、先生の手を更にギュッと握りしめ、下を向いたまま顔を上げないようにして、なんとかして洞窟を出たのです。

洞窟を出た後、先生は他の先生に、

「誰かにさわられた! 後ろに誰も居なかったのに誰かにひっぱられたのよ!!」

洞窟で起こったことを話していきましたが、私は先生にあの時見た白く浮かび上がる女の人の手のような存在については、最後まで言えなかったのです。

阿弥陀寺はとても良いお寺です。

特にあじさいの咲く時期など……。

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