ギィーーー(神奈川県座間市) | コワイハナシ47

ギィーーー(神奈川県座間市)

私が中学生の時、近所のマンションで火災があり、1階の角部屋が全焼してひとり暮らしの中年女性が亡くなりました。

私が学校から帰ってくると、家の周りでどこかコゲ臭いにおいが漂っていたのを覚えています。

その火事があった次の日の夜のこと。

もう時間は0時半近くなっていたので、布団の中で寝ようとしていた時のことでした。

どこからともなく、

ギィーーーギィーーー

という音が聞こえてきたのです。

「あれ? なんだろう……」

と思ったのですが、さほど気にすることなく布団の中に入っていました。

しかし、その音は鳴り止まず、30分以上しても、

ギィーーーギィーーー

と鳴っているのです。

何の音だか定かではないのですが、

ギィーーーギィーーー

という音は鳴り続いています。

「もう……うるさいなぁ……」

と、思いながらも、その日は寝てしまいました。

次の日の夜。

また時間は12時近く、私が布団に入り眠ろうとしていたら、あの音がしてきたのです。

ギィーーーギィーーー

「またあの音がしてくる。もう近所迷惑だなぁ……」

ギィーーーギィーーー

真夜中のしーんとしている中で、そのギィーーーという音はなおさら大きく聞こえてくるような気がしました。

ギィーーーギィーーー

けれど、私も次の日に学校があるので、早く寝なければなりません。

うるさいなと思いつつもこの日も眠りにつきました。

そして、そのまた次の日の12時頃。

ギィーーーギィーーー

やはり、あの音が鳴るのです。

私は耐えられなくなって、この音の出所がまずどこなのか、探りたくなったのです。

この音が聞こえてきた時からずっと、外から聞こえてくるので窓を開けて外を確認しました。

けれど、外は真っ暗のいつもの風景で、外で誰かが何かをしている気配は全くありません。

たったひとつ違うのは、私の部屋の窓から見えるあのマンションの1階の角部屋です。

前まで白いカーテンがかかっている窓が見えたのですが、今見えるのはぽっかりと真っ黒い穴の空いたような部屋だけ。

ギィーーーギィーーー

私は急に怖くなり、窓をすばやく閉めて、布団をかぶり寝ました。

その日の夕飯時、私は母にあの音の話をしてみることにしました。

「あのさぁ、ここんところ毎晩12時頃にギィーって音がしてうるさいんだけど、聞こえる?」

と聞いてみると、

「そういえば、聞こえる聞こえる」

と母も私と同じ音を聞いていたのです。

「どこからあんな音するんだろうね?

今日見に行ってみようかぁ?

誰かが出してるなら、迷惑だから近所の人にでも相談したいし」

と母が言ったので、その夜、母と2人で外に見に行ってみることにしました。

0時。あの音が聞こえてくる時間であろうと家の周りを見まわりますが、まず異常なし。

そんなこんなしているうちに、かすかにギィーーという音が聞こえてきたのです。

「あ? なんか聞こえてこない?」

そう言って、母とその音がする方向へと歩いて行きます。

ギィーーーギィーーー

だんだんと大きくなるその音は、どうやらあのマンションの近くから聞こえてくるようなのです。

「この近くからしない?」

母もマンションの近くに目を向けます。

ギィーーーギィーーー

だんだんと近づく2人の目の先には、あの角部屋。

火災で全焼して、まっ黒くなっている部屋がありました。

「絶対ここだよね……」

私と母の意見は同じでした。

「これヤバイよ。今すぐここから逃げよう」

と、母が私の手を引いて早歩きで家路を急いだ瞬間、私は何故か振り向いてしまったのです。絶対にそんな状況で振り向いてはいけないのに、振り向いてしまったのです。

あの、ぽっかりと空いた漆黒の闇の中に、ぼーーっと浮かび上がり青白く漂う炎の姿。

まさに「ひとだま」を見てしまったのです。

「キャーーー」

私は母の手を強くにぎり抱きつくようにして家路を急ぎました。

その後、このギィーーーという音は毎晩続き、火事が起きてからちょうど1週間目でパタリと止まったのです。

私はある朝、近所のおばさん達に会ったので挨拶がてら、

「そういえば、1週間くらい前まで毎晩0時頃になると、ギィーーーって音がうるさくありませんでしたか?」

と聞いてみると、

「そんな音、全然してなかったわよ」

口々にそう言われてしまいました。

どうやらあのギィーという音は私たち親子しか聞こえていなかったようなのでした。

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