石橋山古戦場───
石橋山の戦いは平安時代の末期、治承4年に源頼朝と大庭景親ら平氏方との間で行われた戦いです。
以仁王の令旨を高く掲げ、平家打倒のため挙兵した源頼朝勢でしたが、頼朝方のわずかな兵に対して、平家方の絶大な兵力に力戦奮闘しますが、多勢に無勢。
頼朝方は敢えなく惨敗してしまったのです。その戦いが繰り広げられた場所が小田原にある石橋山なのです。
石橋山古戦場は、その戦いの激しさから、戦いで亡くなった源氏武者の亡霊が出るなど、世間的にはあまり知られていませんが、知る人ぞ知る隠れた曰くつきスポットなのです。
この戦場跡の下には海沿いの岸壁に面した道路があり、過去にこの場所をタクシーで走っていたところ、車内から急にドアを開けてそのまま海へ飛び込んだ某芸能人の方がいらしたそうです。
かく言う私もこの場所で視てしまったのです。
家族で父の実家に行くのでこの道を車で走っていました。
時間は夕方頃だったと思います。
ちょうど海が綺麗に見える道路に入った時に私が突然
「キモチ悪い!」
と言ったのです。
と、いうのも素敵なはずの景色なのにふいに自分でもわからずにそんな言葉が口を衝いて出てしまったのです。
その言葉を聞いた母が
「あんたよくわかったわね」
と言ったので、私が
「何が?」
と聞き返すと、
「ここちょうど、自殺が多い所なんだよ」
と、この場であった事を話してくれたのです。
「本当は黙っておこうと思ったけど、あんたが気持ち悪いって言うから」
「え!? 私そんなこと言った!?」
と、まだ自分が言ったことを理解できていないくらいだったのです。
そうしたら、運転していた父も、
「言った」
と言うので、ようやく自分がふいにこの場に対して
「キモチ悪い」
と無意識に言っていたことを初めて理解したのです。
そうして、父の実家で時間を過ごし、帰る頃には、もうすっかり暗くなっていて、8時頃にはなっていたと思います。
一本道なので、帰りもまた来た道を通らなければなりません。
となるとまた、あの「キモチ悪い場所」を通るのです。
私は行きの時のことを思い出し、あんまり良くない気がしていました。
もうすぐあの場所に入って行きます。
車のライトだけで照らされた道路を進むにつれて恐怖感は募るばかり。
そして、ついに車があの場所を通り過ぎようとしたその時、
「あぶない!!」
と私は叫んでしまったのです。
その声に驚いた父が車を止めます。
「どうしたの?」
父も母も驚きながら声を上げました。
そりゃそうでしょ……何もない所で急に私が「あぶない」と叫んだのですから。
ですが、私には「何もない所」ではなかったのです……。
「人が……人影が……車の横を……横切ったの……黒いの黒いのが見えた……」
黒い大きい人影のようなモノが、助手席に乗っていた私の目の前に突然現れたのです。
その姿はもちろん父には視えていないのです。
私だけが視えていたようなのですが……。
幸いなことに後続車も居なかったので、事故にならずには済みました。
奇跡のようです。
あの時、私が見た黒い人影はいったい……。
実は、石橋山古戦場で亡くなった武者の霊が成仏していった道もあるのですが、もしかしたら私が見た黒い人影は、この時に敗れた武者の亡霊だったのかもしれません。
この時のお話は大変スピリチュアルな内容になってしまうので、別の機会があればまたお話ししたいと思います。