殺人踏切、第一町谷踏切の怪(埼玉県上尾市) | コワイハナシ47

殺人踏切、第一町谷踏切の怪(埼玉県上尾市)

埼玉県人には高崎線、京浜東北線と聞くと顔をしかめる人がいる。当たり前のように電車遅延が発生し、線路に幅が無いのか知らないが、どこかで事故や故障が起こると上下線全てが運転見合わせを行い、大量の帰宅難民が発生する。

しかも、大宮で運転取り止め、折り返し運転、等という処置にされると、そこから先の高崎方面、川越方面の利用者に残された帰宅手段は殺人的に混むバスか、高額になってもタクシーを使うしかなくなるという、考えるのも暗くなる選択肢しか残されていない。

酷い時など、一週間のうちに五日以上遅れが発生している時があり、時刻表の意味を考えてしまう事もある。致し方ない理由もあるだろうが、新車両の開発に予算を使うのであれば、是非とも事故時の回避ルートを作るなどして欲しいのだが……。

しかも、高崎線には大宮を越えてからも、鬼門となる踏切というのが幾つか存在する。その一つが北上尾と桶川駅の間にある、ブリジストン通りから繋がる第一町谷踏切だ。

ここは何故か異様に事故が多く、結構な確率で人身事故になるという踏切だ。周辺では線路を渡る一番大きな踏切なので、ただでさえ混む、というのもあるのだが、それにしても毎月のように事故が起きている印象がある。大宮駅で高崎線電車遅延のアナウンスがあると、またあそこの踏切だろう、位に思う癖がついてしまった。

そうした交通的理由以外にも、私は過去にここで奇妙な物を見た友人の話を、頻度の高い事故や遅延の原因ではないかと思っている。

この踏切があるのは、桶川駅と北上尾駅の間だが、北上尾の次の上り駅は上尾である。北上尾駅と上尾駅の間に、とあるお弁当工場があった。地元のコンビニに寿司などを卸しており、夜間でも配送の車が出入りしていた。

一九八九年、丁度年号が平成になった直後の一月の事。

私の友人がその工場でアルバイトをしており、その日もいつも通りバイトに向かったという。大体高校が終わった一八時半頃から工場に入り、仕事が終わるのは大体二一時半から二二時だったという。

その日は、注文が通常よりもかなり多く、作る寿司やおにぎりの量も倍近くになり、工場を出た時は、既に二三時近くなっていたそうだ。夜の冷気の中、マフラーを巻いて出て来た友人Aは、線路沿いに桶川駅に向かって自転車を漕ぎ出した。

Aの家は桶川駅前にある団地で、下手に細い道を通るより、線路沿いの道を真っすぐ帰る方が近かったのだが、途中には嫌な所が二カ所あったという。

一つは先程から説明にも出ていた踏切。その先には大きなバイクでは通れないかも、というような小さな踏切があり、その踏切は墓と神社に挟まれているという、如何にもな立地にある通行者用の小踏切だった。

当時はまだ現在のような音楽をデータで聞く携帯プレイヤーは無く、カセットテープにダビングするか、CDプレイヤーといってCDを丸ごと入れて再生する機器しかなかった。高校生には薄型の音楽カセットプレイヤーが人気で、Aも私と同様の洋楽ファンで、移動時はいつもイヤホンを着け、音楽を聞いていた。

その日も自転車を漕ぎ出す前に、プレイヤーのボタンを押し、流れ出した音楽と共に、白い息を吐きながら、走り出した。

のだが、この日はいつもの倍も注文があり、彼の担当は釜炊きという場所で、特に重労働で神経を使う場所だったので、手が震え、立ちっぱなしの部署でもあるので、足にも力が入らず、よろよろと左右によれながら、ゆっくりと進んでいたという。

釜炊きの仕事は、鉄製の大きな釜に既定量の米、油、塩、酢、水を入れ、コンベアで流す。それを何十と作っていると、最初の釜がバーナー付のコンベア部分を通って、炊き上がった酢飯となって出てくる。おにぎりの時は塩を多めにして、酢を抜く。

炊き上がった釜は、撹拌してプラスチックの巨大な専用タッパーに入れる機械に一個ずつかけていく。タッパーに入った米を大きなしゃもじでかき混ぜ、高さを均したら、冷却器にかけ、温度を下げる。ここまでした米を、初めて各寿司に加工する部屋に送り出すのだが、次から次へと釜が出てくるし、一度炊き上がると、作りながら炊き上がりの処理をし、冷却もするという、三個の仕事が同時進行になる部署で、さっきも言った通り、釜が重い為、腕がまず悲鳴をあげるのだ。その間は立ちっぱなしで走り回る為、足も当然疲れる。仕事が終わり掃除を済ませた時には疲れ切ってしまうそうだ。

そんな訳で、この日はいつにも増してのんびり進むと、踏切が見えて来た。最終電車の少し前、丁度電車が途切れる時間で、線路は音もせず、明かり一つ見えなかったという。しかも、いつもは夜でも交通量があるその踏切には、全く車や自転車の人影も見えず、しーんと静まり返り、白い照明に照らされて冷え切った空気の中に佇んでいた。

曲を口ずさみながら、踏切に近付くと、遮断機の足元に寄りかかっている人が居た。丁度背中を向けるように座っており、全体的にシルエットのように見えたが、何となく作業着を着た男性のように見えたらしい。

「うわっ、酔っ払いだよ……」

Aは直感的にそう感じた。以前にもそこで飲んだくれて、通行者に絡む酔っ払いを見た事があった。ただでさえ疲れているのに、絡まれてはたまらない。踏切直前からペダルを漕ぐ力を強め、一気に通り過ぎてしまおうと思ったそうだ。

ガチャガチャとペダルを踏み込み、踏切を通り過ぎる。

やや大きく外に膨らみ、座り込んだ人を避けるようにコースを取りながら、通り抜けると同時に男性に目を向ける。

ほんの数秒見ただけでも、その男性が怪我をしているのは分かったという。胸の部分から下腹部にかけて、作業着のようなグレーの服に血のような跡がついていたらしい。

Aは瞬時に、これは関わったら厄介だ! と思い、そのままスピードを落とさず踏切を走り抜けた後もしばらく力走を続けた。

特に怒声も聞こえず、何もない様子なので、音楽プレイヤーのボリュームを切り、スピードも落とす、振り返らず、耳だけを澄まして様子を窺う。

今日はどうしたものか、相変わらず車の一台も通らず、静まり返っている。取りあえず酔っ払いに絡まれる事が無かったので、次は別の考えが頭をよぎる。

あの人は本当に事故か何かで怪我をしてたんじゃないのか? だとしたら……

それでも現実には戻ってみようか等とは全く思わなかったらしい。Aが考えたのは、家に電話して母親に相談し、警察を呼んで調べてもらおうという案だった。

AはPHSという、通話距離が制限される携帯電話の兄弟分のような電話を持っていた。次の通行者用の小踏切が近付いてきた時、その辺りは交通量も少なく、止まって電話を掛けるには丁度いい場所だったので、Aは自転車に跨ったまま、家に電話を掛けた。

電話には夜食を作る為に、起きて待っている母親が出た。事情を話し、どうしようかと相談する。母親が、ちょっと待っていろと言い、父親を起こしに行く。

Aが寒い夜気の中、ポケットに手を突っ込んで待っていると、PHSが鳴る。出ると、寝ぼけた感じの父親が、取りあえずこちらで警察に電話するから、お前は帰って来いという事を言っていた。

「おい、お前は大丈夫か? 怪我とかないか?」

「ああ、大丈夫だよ、今から帰るから。コンビニ寄るけど何か要る?」

「え? 何だって? よく聞こえないぞ? 音楽止めろ」

ああ、親父寝ぼけてるな、と思ってもう一度言おうと思った時だった。

「ベチャ、ザジャッ、ベタン、ザジャッ……」

後ろから音がする。気が付かなかったが、親父がうるさいというのはこの音の事か? そう思って振り返った時、Aは今までの人生で一番怖かったという場面に遭遇した。

遠く後ろになった街灯の光の中で、先程の男が立ち上がり、ガードレールに右手で寄りかかりながら、やはり片足で飛び跳ねるようにしてこちらに進んでくる。

え? っと思って目をこらすと、男の左足は腿から先が無く、同じく左腕はだらんと下がり、飛び跳ねる振動でブラブラと適当に動き回っている。

そして、右手でガードレールを掴む時に、

「ベチャンッ!」

と、叩くような音がし、飛び跳ねて着地する度に、

「ザジャッ!」

という、小石や砂利を踏みしめるような音がしている。

男の顔は相変わらず逆光になり、陰が落ちていて分からないが、とにかく体半分が事故に遭い、ボロボロになったように見えたという。

PHSを切るのも忘れ、ポケットに突っ込むと、Aは前を向いて叫びながら走り出す。

「うおおっ! こええ! 何だあいつ! 何だよあいつ!」

思いっきり立ち漕ぎで自転車を走らせ、小さい踏切を抜ける、一度も振り返りもせず、自分の家の近くにあるコンビニに逃げ込んだ。

店内には何人か客がいて、店員が忙しそうに商品を補充している。照明も明るく、流行りの曲が連続でかかっている。Aが店に入ると、店員からいらっしゃいませ、と明るい声が飛ぶ。業務用のエアコンがかかっているので、温かく、心底ほっとしたそうだ。

しばらく立ち読みの客に交じって、漫画雑誌を形だけめくっていたが、特に外で変わった様子も無く、救急車の音もしない。

はっと気付いてPHSを取り出すと、何度も家から呼び出しがあったようで、小声で折り返す。母親が心配そうに出て来て、今どこかと尋ねる。

男の事は話さず、今コンビニだと伝えると、ドアの前で待ってるから早く帰って来いと言われ、恐る恐るコンビニの外に出る。

辺りを窺っていたが、変わった様子も無い。団地はかなり広く、数棟が密集しているが、敷地内は自転車置き場や、自販機など明かりもあるし、普段通り慣れている場所だ。

距離にしてコンビニから数十メートル、多くても一〇〇メートルで自分の家のある棟に辿り着く。それでも気持ち静かに、なるべく音を立てずに自転車を進め、自転車置き場に着いて、鍵を掛け、一気に自分の家の階まで走る。

ドアの前ではコートを着た母親が待っていて、Aの顔を見るとドアを開け、お帰りと小声で言い、早く入れと手で合図した。

Aは取りあえず無事に帰り着き、荷物を降ろした。居間では父親がテレビを見ながら待っており、母親と揃った時点で、先程見た事を一通り話した。

母親はピンと来ない様子であったが、意外にも父親がAの話を真面目に聞いてくれた。そういう事もあるかもしれないな、と言い、あまり思い出さないようにして、通う道を変えなさい、と言ったという。

母親は、お父さん怖がらせないでよ、と文句を言っていたが、全く取り合わず、Aの方を見て、淡々と話し始めた。

「あのな、俺が勤めてもう二十何年になるけど、毎日のように電車を使うだろ? その間に、あの踏切でどれだけ事故が起こったと思う? ちょっとした病院程度の死傷者は出てると思うぞ。それもな、あそこの事故は続くんだよ。一回起こると、その二日後とか、続いて起こる事が多い気がするんだよな……」

普段はそんな話をしない父親の話を聞いて、ぞっとしながら着替えをし、歯を磨いている時だった。

Aの家は四階で、洗面所の窓から、道路を挟んで、桶川駅が見えていた。既に終電の時刻は過ぎ、ホームの電気は落ちており、当然人気も無い。

と、思ったのだが、線路内を誰かが動いている。

夜間でも補修工事等で人が居る事はあるだろうが、その場合はライト位点けている。その時は、濃いグレーに沈んだ線路内を、更に真っ黒な影が動いて、すぐさま嫌な予感がしたのだという。

「じっと見たんだよ……ま、距離があるから、細かい所は分からないよ。でもその影の全体の動きはハッキリ見たんだよね……」

影は、飛び跳ねるように動いていたという。

「え? じゃあ、そいつがお前を追って来たっていうの?」

話を聞いていた私は、思わず口を挟んだ。だとしたら、完全にその男は生きている者では無いだろう。駅の営業が終わっても、線路や駅構内に居残っていれば追い出されるだろうし、怪我でもしていたら救急車を呼ばれているだろう。

「分かんないよ、何度も言うけど暗かったし、距離もあるしさ、黒い影みたいに全体が見えただけで、ちゃんと確認してないからね。ただ……動きは、間違いないと思うんだよな。あのひょこひょこした、飛び跳ね方は」

私は、過去に雑誌の手伝いで、そうした怪奇企画を担当していた事がある。その時、職業別の怖い話を集めようという企画で、タクシー運転手や、鉄道会社勤務の人に集まってもらい、話を聞いた事がある。

世の中には、事故の多い駅、踏切は確かに存在するという。物理的に、幅が狭い、見通しが悪い等、原因が分かっている他にも、何故か事故が多発する場所というのが確かにあるのだそうだ。

「これは、そういう感の強い同僚で、すぐに辞めていった奴の言ってた話なんですけどね、何でも事故に遭って死んだ人が、そのまま亡くなった線路をうろうろしているらしいんですわ。で、犯人を見つけようとしてるのか、うろうろしてるうちに、他の駅まで行ってしまう事があって、その他の駅に、やっぱり亡くなった方がいると、混ざり合うとか何とか? 塊みたいになる事があって、そうなると手に負えないし、他の犠牲者も呼ぶらしいんです。ま、私は聞いただけなんで、本当かどうかは、あれなんですが……」

元鉄道会社のBさんがそういう話をしてくれた時だった。

「ああ、私達の業界にも、そういう話がありますよ。事故を起こしたドライバーは、車を換えようが、勤務地を変えようが関係なく、被害者は後を付いて来て、いつか必ず追い付いて、そのドライバーに復讐するって。確かに、大きな事故起こした人は、やがて遠からず辞めていってますね」

ベテランタクシードライバーのCさんが続けた。

そういう、犠牲者や自殺者が彷徨う事があるのだとしたら、Aは運悪く亡くなった人に出会ってしまったのだろう。そして気にかけてしまった事で、向こうと無言のコンタクトがとれてしまった。何とかしてくれると思ったのか、仲間にしようと思ったのか、しつこく探していたんだろうと推測される。

「や、止めろよ! まだ俺、仕事で上尾の方よく行くんだからさぁ……」

Aは迷惑顔でそう言ったが、説明の内容には反論は無かった。

「親父が一回見たんだってよ……」

「え?」

意外な言葉に聞き返してしまう。Aの親父さんは役所勤めで、堅いタイプだ。日頃から冗談を言うような事も無い人の筈だが。

「あの後、俺がバイトの時とか、買い物の時とか、絶対あの線路沿いの道を通らなくなったんだよな。家族で出かけた時も、通らないでくれって頼み込んでさ……

でも、ほらうち、姉貴が一人暮らししてるんだけど、たまに帰ってくるんだよね。で、親父の会社で使う買い物があって、姉貴が車出したらしいんだ。

姉貴は知らないから、当然一番近い線路沿い通ってさ、そしたら、あの踏切で事故があって渋滞してたんだって」

「それっていつ? 何時頃?」

「え〜とね、確か遊び行ってて、バイト無かったから平日だな、それで夕方位。○日だったと思うよ。俺が聞いたのは帰って来てから、夜の九時とかそれ位。姉貴がね、親父が変な話してたって言ってさ」

その話はこうだった。親父さんが飲み会で遅くなった帰り、上尾駅を出てしばらくして電車が停まった。車内アナウンスでは、北上尾駅で人身事故という説明だった。

既に北上尾駅は目前で、混雑を避けて後方車両に乗り込んでいた親父さんは、肉眼で駅の様子が見えたという。

北上尾駅は小さい駅で、目の前の学校の為にあるような駅である。その駅を過ぎてすぐの踏切、Aが怪異に遭遇した踏切辺りに、沢山の光が見える。どうやら救急車等が来ているようだ。駅の線路に降り、係員らしき人が数人走っていく。

家の目の前で足止め、参ったなぁと眺めていると、遠くの人混みらしき塊に、おかしな奴がいる。ふらふらと左右に揺れ、酔ったような動きで、事故処理をする一団の周りをつかず離れず歩き回っている。

あと二駅だってのに、と親父さんが壁に寄りかかりながら見ていると、やがてそのおかしな動きの奴がこちらに戻って来た。ゆっくり、ふらふらと歩いてくるそいつは首の付け根から上がそっくりもぎ取れていて、上半身は赤黒く染まっており、どんな服かも分からない程だったそうだ。

親父さんは思わず持ってた週刊誌で顔を覆って、また見たが、そいつはまだ歩いている。幽霊や何かに全く興味の無い人で、今までにもそんな物を見た事は一度も無かったので、相当酔っているか、見間違いかと何度も見返したのだが、それでも居る。

周りの人で、事故の様子を写真に撮ったりという、酷い行為をしている者もいたが、全くその首なしには気付いた様子が無かったそうだ。

親父さんはもう目を背けてしまい、電車が再開するまで二度と見なかったので、その後そいつがどうなったか分からないが、あの線路にはそういうのが居るんだよ、とAのお姉さんに話して聞かせたそうだ。

Aは自分の体験と親父さんの話もあり、現在も小さな用で出かける時でも、決してその道は通らない。遠回りしてでも避けるという。

その踏切は、それから二十何年経った今でも健在で、当然のように事故も頻繁に起きている。寂しかった線路沿いの道も、大分に家や建物が増え、コンビニまで出来たので、見た目は明るくなり、昔を知らない人には至って普通の道でしかない。

それでも、その踏切も、その先の小さい踏切も、小さい踏切を挟むようにある墓地も、神社も健在で、私としてはその踏切と踏切の間に、何かあるのではないかと思っている。

「こんな話をして、おかしい奴と思うだろうけど……あ、桜井はそっちの専門家か、じゃあ、まぁ、大丈夫か。とにかく俺が見たのは本当だよ。親父のは、話を信じれば俺と同じようなのを見たんだろうなぁ……」

別に私は専門家でも何でもないのだが、興味があるので話を蒐集しているに過ぎない。ただ、この踏切は噂だけでなく、全く別の時に、この地元でも何でもない人から、ここ何かありますか? と指摘を受けて、驚いた事がある。

私は今から四〜五年前に、怪談動画のコンテンツを作っていた時期があり、自分の地元周辺でよく収録を行っていた。

参加者に、一人非常に感の強い子がおり、その子が地元の収録に参加した時だった。

怪談動画プラス、心霊スポット取材動画の収録だったので、どうしても夜に撮る事になる。撮影はハードだし、終電間際まで収録、移動が続くので、ロケ車が無い時は食事の時間も満足に取れない、という流れだったので、せめてゆっくりと座って帰ってもらおうと、帰りはグリーン車を用意した。

次の日、その感の強い子から電話があった。私は送り出して安心し切ってしまい、全く知らなかったが、桶川を出て、北上尾の手前で、危険を知らせる警報が鳴ったとかで、電車が停まったという。時間にして一五分程度だったので、特に帰宅には困らなかったそうだが、その後しばらくは、徐行運転、停止を繰り返し、中々大宮まで着けなかったらしい。

徐行しながら、北上尾の踏切を通り過ぎる時、彼女が外を何気なく見ていると、あの踏切の、遮断機の棒に、無数の黒い腕が絡みつくようにぶら下がっていたそうだ。

「あそこは、何かマズイ所じゃないですか?」

彼女は恐々とそう聞いてきた。私はAの話を思い出し、そうだよ、と答えた。

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