衣服の話 | コワイハナシ47

衣服の話一覧

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学生帽(東京都)

A子さんが高校生だった頃の話。 当時彼女は都内の下町に住んでいた。 それは三月十日だったと今もはっきりと覚えている。期末試験前の試験勉強の真っ最中だったからだ。 A子さんの家の隣のビルで改装工事がはじまり、うるさくて試験勉強どころでは...

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シースルー(東京都)

都内のデパートで、和服の古着の展示即売会があった。 高級和服がずらりと会場をうめつくしている。 Sさんは、その会場で気にいった打掛けを見つけた。 奥さんの好みなら、これが気にいるはずだと思ったのだ。 しかし、とても買える値段ではない...

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赤い靴は助からない(埼玉県)

埼玉県のとある総合病院には、赤い靴にまつわるジンクスがある。 ここの外科に勤務していた看護師の吉塚恵利さんによると、今から一〇年ほど前に救命救急センターに運び込まれた三、四歳の女の子が赤い靴を履いていた。 女の子は意識がはっきりしていて...

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女優帽 あの日彼女が被っていた帽子(東京都)

五年ほど前に、同性の知人が亡くなった。私と同い年で家が近かったので、二〇〇〇年頃から三、四年間ぐらい、かなり親しくしていた。その後、私は子供を生んで暮らし方が激変し、引っ越してしまったこともあって、疎遠になった。 彼女は十八のときから女優...

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三枚襲3・白(東京都)

明治から昭和初期にかけては、黒引き振袖が婚礼衣装として一般的だった。 白無垢の伝統は古く、室町時代中期から戦国時代の幕臣、伊い勢せ貞さだ陸みちが著した『娵入り記』に《衣裳は上着に幸ひ菱。白き小袖。打ち掛けたるべく候》とあり、室町時代には早...

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三枚襲2・赤(東京都世田谷区)

母は和裁はやらなかったが洋裁はセミプロで、私が小中学生の頃には、個人商店や小さなアパレル・メーカーの注文を受けて、自宅で洋服や布雑貨などを作っていた。だから祖母の死後、母が遺された反物や着物で和風の洋服や雑貨をこしらえはじめたのは、ごく自然...

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三枚襲1・黒(東京都世田谷区)

「近頃は本を書いてるんだって?えらいねぇ」 法要の前に、式後の御斎の支度を手伝っていると、父方の叔母のうちの一人が話しかけてきた。この人は庫裏に半世紀も住んでいる。庫裏というのは、ここの宗派では、台所や書庫も含めた寺とつながる居住空間を指...

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黄色いワンピース(滋賀県)

琵琶湖はその名のとおり、楽器の琵琶を逆さにしたような形をしている。 滋賀県のほぼ中心にあるために面積のほとんどを占めているような印象があるが、実際は全体の六分の一にすぎない。 滋賀県の形は比較的きれいな矩形であるから、やや南西方向に傾い...

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祖父が脱ぎ捨てた外套(滋賀県守山市)

琵琶湖の浜辺で何かいいものを拾ったという話はあまり耳にしない。 いくら琵琶湖が広いとはいえ陸地に囲まれた淡水湖なのだから、浪漫あふれる外国からの漂着物めいたものは最初から期待できるわけはないのだが。 浜辺に何か打ち上げられていたとしても...

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赤い長靴(滋賀県長浜市)

最近、物や人の名前が咄嗟に出てこなくなった。 「あれ、なんて言うんやった?」「あの人なんて名前やったかいな」とたびたび家族に訊ねる。 冗談めかして呆れられたり笑われたりするのはいいのだが、ある種の怯えを含んだ目で見つめながら「〇〇やん、...

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おんなごころ 大念仏寺(大阪市平野区)

ある年の、夏の盛りの出来事である。 その日、NPO職員の三浦さんは大阪市の平野区へ向かっていた。 彼の所属するNPO団体は、養蚕や綿業などの資料作成を目的に設立されている。その日の訪問も、かつて紡績が盛んであったH区を調査するためのもの...